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【Q&A】核非人道会議 米英初参加も廃絶へ遠い道のり
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第3回「核兵器の非人道性に関する国際会議」で、議長総括を読み上げるオーストリア外務省のクメント軍縮軍備管理不拡散局長=2014年12月9日、オーストリア・首都ウィーン(共同) オーストリアのウィーンで8、9日に核兵器が人類に及ぼす影響を議論する「核兵器の非人道性に関する国際会議」が開かれた。
Q どんな会議なの?
A 核兵器を持たない国々は近年、核軍縮が進まない状況に懸念を強めている。このため、壊滅的な被害を与える核兵器の非人道性を議論し、廃絶につなげようとしているんだ。初会合は2013年3月にノルウェーで開催された。今回は第3回で日本を含め約160カ国が出席したよ。
核を保有する5大国のうち米国と英国も初めて参加したんだ。核保有国の軍縮もテーマとなる来年春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて大きな弾みにしたいという議長国オーストリアが米英両国に参加を働き掛けたよ。日本の被爆者も爆心地の惨状を訴えたね。
Q 会議の成果は?
A 議長総括で、国際的な紛争や緊張の高まりを考慮すれば核兵器が使われる可能性は現実的だとして、究極的な核兵器全廃を求める文書をまとめた。でも、廃絶に至る具体的な道筋を示せず、核を持たない一部の国が主張する核兵器の非合法化と、核保有国が訴える段階的な核軍縮の双方を併記する無難な表現に落ち着いたよ。米英両国に配慮した形だね。
Q 米国の動きは?
A オバマ大統領が09年にチェコのプラハで「核兵器なき世界」を目指すと訴えた演説は有名だね。でも米政府や議会には賛否両論があり、核軍縮は進んでいないのが実情だ。核廃絶派はNPT再検討会議に向けて勢いを付けたい考えだけど、保有国が大規模な軍縮に動く気配はなく、再検討会議は難航が予想されているよ。
Q 世界にはどれぐらい核兵器があるの?
A スウェーデンのストックホルム国際平和研究所は今年1月時点で、世界に約1万6300発の核弾頭があると推定している。ロシアが最多の約8000発で、続く米国が約7300発と、両国で全体の約94%を占めるんだ。米露は近年、弾頭を減らしてきたけど、ウクライナ情勢で関係が悪化し、削減交渉は足踏みしている。
Q 日本の立場は?
A 来年は広島、長崎への原爆投下から70年だ。日本は戦後、唯一の被爆国としての立場を訴え続ける一方、米国の「核の傘」に依存してきた。政府の代表団は今回の会議で、核廃絶に向けて国際社会の結束を呼び掛けた。でも専門家からは「政府はどこまで本気で核廃絶を追求できるのか」と疑問の声も上がっているよ。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪「現実的な手段」強調≫
第3回「核兵器の非人道性に関する国際会議」の一般討論で、米国のシャインマン大統領特別代表は「核兵器なき世界」を追求する考えを示した上で、「(核軍縮進展には)現実的な手段を講じなければならない」と強調した。
シャインマン氏は「包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効に向けた取り組みを続ける」とも述べ、停滞する兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約交渉の進展を求めた。
また、長崎で被爆した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中煕巳事務局長(82)が被爆の惨状を証言。核兵器禁止の交渉を始める「大きな一歩を踏み出すことを強く訴える」と語り「『国家の安全』の名において核兵器が使用されることは決して容認できない」と訴えた。(共同/SANKEI EXPRESS)