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スマトラオランウータン、動物園から解放へ 哲学的には「人間」 裁判所が異例判決

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スマトラオランウータン、動物園から解放へ 哲学的には「人間」 裁判所が異例判決

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「人権」を認め、動物園からの解放を許可する判決が出されたオランウータンのサンドラ=2014年12月21日、アルゼンチン・首都ブエノスアイレス(ロイター)  南米アルゼンチンの裁判所が21日、首都ブエノスアイレスの動物園で暮らす29歳のメスのスマトラオランウータン、サンドラの「人権」を認め、違法に自由を奪われているとしてブラジルの動物保護区への移送を許可する決定を下した。オランウータンが人間と同じDNAを97%有し、深く物事を考える能力を持つ点に着目。哲学的には“人間”であるとみなし、人間が自由を謳歌(おうか)する権利をオランウータンにも認める、異例の判決となった。

 アルゼンチン、権利認める

 英紙デーリー・メールやガーディアン、ロシアのニュース専門局ロシア・トゥディ(いずれも電子版)などによると、サンドラは1986年、ドイツ北部ロストックの動物園で生まれ、94年9月、ブエノスアイレスのハルディン動物園にやってきた。

 オランウータンは生息地であるアジアの熱帯雨林の消失などで約100年前の23万頭から5万頭未満に激減。中でもスマトラオランウータンは約7500頭しかおらず、世界自然保護基金(WWF)が絶滅危機に瀕していると警告する希少種だ。

 このため、自然保護団体などがサンドラを動物園ではなく、動物保護区に戻して繁殖を図るべきだと主張。「動物の権利のためのアルゼンチンのプロ弁護士協会(AFADA)」は11月、人間同様、高度な思考能力を持つサンドラを動物園で監禁し、物体として扱うのは不当だとして、裁判所に監禁状態を解くための人身保護令状の発行を求める訴えを起こしていた。

 裁判所は弁護側の主張を全面的に認め、サンドラは「人間ではないが人格は持っている」と判断。人間と同じ基本的人権が付与されるべきだとした。

 AFADAの弁護士、ポール・ボンパドレ氏は、アルゼンチンの日刊紙ラ・ナシオン(電子版)に「今回の判断は、動物園やサーカス、科学研究所などで不当に自由を奪われている類人猿や知的生物(の解放)に道を開くものだ」と判決内容を高く評価した。

 一方、動物愛好家が12月に米ニューヨーク州の動物園にいる26歳のチンパンジーについて、不当に監禁されているとして「人権」の適用と、保護区への解放を求めた訴訟は、州高裁に退けられている。チンパンジーは人間と違って「人権」を得ることによって果たすべき「法的義務や社会的責任を果たせない」というのが理由で、訴えを起こした動物愛好家は上訴する意向だ。

 いつか「恩返し」あるかも…

 広い意味での「人権」を認めた今回の判決は今後、こうした訴訟の判決内容にも影響を与えそうで、デーリー・メールはアルゼンチン国内だけで数千件ある同種の訴訟に門戸が開かれたとする専門家の話を載せた。

 大ヒットしたSF映画「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」(2011年)は、アルツハイマーの治療薬投与を機に知能が異常発達した猿が人間による過酷な動物実験に怒りを募らせ、反乱を起こすという物語だ。今年公開された続編「猿の惑星:新世紀(ライジング)」では、猿の軍団が親ヒト派と反ヒト派に分裂する。親ヒト派を率いるのは人間の科学者に息子同然に育てられたオスのチンパンジー、シーザーだ。ブエノスアイレスの動物園は現時点で上訴するかどうかについてコメントしていない。猿に優しく接しておけば、いざというとき、それなりの「恩返し」は受けられるかもしれない。(SANKEI EXPRESS

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