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絶滅まで5頭 密猟・内戦の犠牲 キタシロサイ、米動物園で1頭死ぬ
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米カリフォルニア州サンディエゴ 世界中にたった6頭しか生存していなかった絶滅危惧種のキタシロサイの1頭が死んだ。米カリフォルニア州サンディエゴ動物園で飼育されていた推定年齢44歳のオスの「アンガリフ」で、高齢による自然死とみられる。アフリカに生息するシロサイはアフリカゾウに次ぎ地上で2番目に大きな哺乳類で、キタとミナミの2種がいる。サイの角は中国で漢方薬の材料として珍重され、密猟が横行。キタシロサイは生息地域での紛争多発で保護活動が頓挫し、すでに野生種は絶滅した。種の保存のための人工授精も失敗が相次いでおり、このままでは残された5頭の寿命とともに滅ぶしかないとの危機感が高まっている。
「動物園で愛されたアンガリフの死によって、この素晴らしい種は絶滅に一歩近づいた。われわれにとってあまりにも大きな損失だ」
AP通信などによると、サンディエゴ動物園の学芸員、ランディ・リーチェス氏は声明を出し、その死を悼んだ。
14日に死んだアンガリフは1980年代後半に北アフリカのスーダンから輸入された。検視結果は出ていないが、50歳程度とされるキタシロサイの寿命に近い。
その死によって、現存する個体は同じ動物園にいる40歳のメス「ノラ」のほか、ケニアのオルペジェタ自然保護区にいる41歳のオス「スーダン」、25歳のメス「ナジン」、14歳のメス「ファツ」の3頭、そしてチェコのドゥブール・クラローベ動物園にいる高齢のメス1頭の計5頭になった。オスは1頭だけだ。
アンガリフとノラは動物園で何度も繁殖が試みられたが、うまくいかなかった。今年10月には、オルペジェタ自然保護区にいた元気で唯一生殖能力のあった34歳のオスの「スニ」が死亡。自然繁殖による種の保存の希望が断たれたばかりだった。
自然保護区では残されたオスのスーダンの精子を使い、体外受精によるメス2頭との繁殖を試みたが、今月10日に失敗したことが判明した。
リーチェス氏によると、「キタシロサイの生殖機能は極めて複雑で、人工授精の方法が確立されていない」という。それでも、死んだアンガリフの精子は冷凍保存されており、自然保護区の若いメス2頭との人工授精を試みるほか、ミナミシロサイとの交配の可能性を探るなど、今後も種の保存のため懸命な努力を続ける。
世界自然保護基金(WWF)によると、キタシロサイはアフリカで1960年代に約2000頭が生息していたが、中国などで漢方薬の原料として高値で売れる角を狙った密猟が横行し84年に15頭にまで激減した。保護活動により、93年にほぼ2倍まで回復したが、96年から2003年まで生息国のコンゴで激しい内戦が続き、保護活動は頓挫した。
オルペジェタ自然保護区のリチャード・ヴィーニュ最高経営責任者(CEO)はロイター通信に「人工授精が成功しなければ、キタシロサイは今後、数年間で絶滅に向かう」と語った。
ミナミシロサイも準絶滅危惧種に指定されているほか、アフリカでの生息が推定で5000頭超に回復したとされるクロサイも密猟がなお横行しており、同じ命運をたどりかねない。
サンディエゴ動物園のリーチェス氏はロイター通信にこう訴えた。「世界には約3万頭のサイが生息しているが、8時間に1頭のペースで密猟により殺されている」(SANKEI EXPRESS)