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親日ルーマニアは飛躍するか
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チャウシェスク独裁政権崩壊のきっかけとなった軍のデモ銃撃事件から25年を迎えた12月17日、ルーマニア西部ティミショアラの墓地では、礼拝のために犠牲者の顔写真とろうそくが供えられた=2014年(AP)
チャウシェスク独裁政権崩壊から25年となるルーマニアが大きな転換点を迎えている。革命後、市場経済化に向けた改革は多くの困難に直面し、欧州連合(EU)加盟国の中でも経済力は下位にとどまるが、昨年以降は堅実に経済成長を続け、新大統領の就任で政治・経済改革への期待も高まっている。ルーマニアは欧州有数の親日国で、発展に伴い日本との絆も深まりそうだ。
25年前の12月22日。独裁者のニコラエ・チャウシェスク大統領(1918~89年)が首都ブカレストを脱出して政権が崩壊し、ルーマニアは民主国家への道を歩み始めた。当時の反政権デモでは最終的に約1100人が死亡するなど多くの犠牲を払った革命だったが、その後の道のりも平坦ではなかった。
元駐ルーマニア米国大使のマーク・ジーテンスタイン氏は11月、米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)に寄稿し、「ルーマニアは1989年の革命後、EUや西側諸国が支援する改革勢力と、わずかな改革しか望まない政界の実力者たちとの闘いだった」と指摘。
11月16日に行われた大統領選の決選投票でシビウ市長のクラウス・ヨハニス氏(55)がビクトル・ポンタ首相(42)を破って当選したことに触れ、「今回の選挙結果はルーマニア政治の根本的な変化を意味している。おそらく民主や法治、透明性(といった価値観)に向かう転換点となる」と分析した。
ヨハニス氏は経済改革や司法の独立、汚職対策など政界が抱えてきた旧弊の払拭を訴え、大方の予想を裏切る番狂わせを演じたのだ。
ルーマニア経済への期待も高まっている。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は2013年の第4四半期においてルーマニアの国内総生産(GDP)成長率が前年同期比で5.2%に達したことを「驚くべき数字」と表現。
「輸出の伸びと好調な農業生産が成長を後押しした」と分析し、「“東欧の虎”と呼ぶのはやや時期尚早だが、好調な実績は楽観的な予測に根拠を与える」と称賛した。
13年の通年の成長率は3.5%とEU加盟国28カ国の中で2番目に高く、14年の第1四半期の成長率も最も高い3.8%を記録している。
FT紙の電子版は12月11日、米資産運用会社の一部門、テンプルトン・エマージング・マーケッツ・グループのグレッグ・コニーチニー副社長の寄稿を掲載。コニーチニー氏は今後、ルーマニアで構造改革が進み、投資環境が改善するとの見通しを示した上で、今後も首相を続けるポンタ氏との緊密な協力を前提に、ヨハニス新大統領が「ルーマニアをより安全に投資できる国へと変え、新たなビジネスを発展させ、ルーマニアの生活水準を向上させる」との予測を示した。
ルーマニアの経済発展は、日本企業にとってもチャンスをもたらす可能性がある。2013年の対日輸出は前年比9.3%増の2億3200万ユーロ(約340億円)、輸入は17.3%減の2億1800万ユーロ(約320億円)。日本は電気機器や輸送用機器、自動車部品などを輸出し、ルーマニアからは主に木材・木炭や食品などを輸入している。
ルーマニアは「ローマの地」を意味し、先住民のトラキア系ダキア人の国家が1世紀にローマ帝国の版図に組み込まれたことに由来する。東欧では唯一のラテン系民族の国で、人口は2131万人だ。在日本ルーマニア商工会議所の酒生文弥(さこう・ふみや)会頭(58)は、その親日的な国民性を強調する。第二次大戦では同じ枢軸国側に立ち、日露戦争では“天敵”のロシアに勝利したこと、また日本の「武士道精神」に関する書籍が日本への好感と尊敬につながっており、「日本人とわかると相好を崩して近寄ってくる」(酒生さん)という。
在日本ルーマニア大使館は17日、都内でルーマニアと日本の絆をテーマにしたシンポジウムを開いた。ラドゥ・シェルバン駐日大使(63)は「ルーマニアが市場経済を目指して苦難の道を歩んできたなかで、日本からは5つの巨額の政府開発援助をいただいた」と謝意を示した。さらにルーマニア経済の潜在力として、石油・天然ガスの産出国であることや人口の4倍をまかなえる農業生産力、豊富なIT人材などを挙げ、積極的な投資を求めた。
また元ルーマニア外交官のヴィオレル・イスティチョアイア・ブドゥラEU駐日大使(62)は「ヨーロッパはいまだに東方近隣諸国からの覇権主義的な脅威にさらされ、ルーマニアはEUと北大西洋条約機構(NATO)の東の境界として要衝の役割を担っている」とロシアを念頭に地政学的な重要性を強調した上で、こう言い切った。
「ルーマニアのEU内での未来は大きな可能性に満ちている」(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS)