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【佐藤優の地球を斬る】CIA秘密刑務所に神経とがらすロシア
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米中央情報局(CIA)の拷問に関する報告書について説明する米上院情報特別委員会のダイアン・ファインスタイン委員長(中央)=2014年12月9日、米国・首都ワシントン(ロイター) 米国上院情報特別委員会が9日、過去5年間にわたっ米中央情報局(CIA)が拷問を行っていたことを明らかにする報告書を発表した。この報告書に対してロシアが強い関心を示している。
<6000ページのうち公表されたのはわずか500ページ。しかし、CIAの刑務所で行われていた残酷で違法な恐ろしい情景を想像するには十分だった。容疑者たちは水責めを受け、睡眠を妨害され、生きたまま棺に入れられ、銃殺の仮想体験などをさせられた。CIA職員の残酷なファンタジーは留まるところを知らなかった。モスクワ国立大学国際機関・国際訴訟学部のアンドレイ・シドロフ主任教授は、CIA職員は外国でも容疑者たちを拷問したと指摘し、次のように語っている。
「米国の法律によると、米国領内でこのような活動を実際に行った人物は刑事責任の対象となる。これに同意する米国人は何人いるだろうか?非常に少ない。そのためCIAはこのような行為を外国で行った」
米国では2001年から「秘密刑務所」プログラムが実施された。様々な国籍のテロ容疑者たちが捕えられ、特別施設へ送られた。施設へ送られた人々は法的支援を一切持たなかった。彼らが置かれた状況については、親族に伝えられなかった。あらゆる方法を使って彼らから情報を得ようとした。自発的にCIAとの協力に同意した容疑者たちでさえも、あらゆる場合に備えて、隠し事をしないようにと拷問を受けた。例えば、2002年にパキスタンで拘束されたアブ・ズバイダ容疑者は、47日間隔離拘禁された。その後、CIA職員による「作業」が始まり、ズバイダ容疑者は壁に叩きつけられ、ふたが閉められた棺の中に300時間入れられ、83回水責めにあった。これは119人のうちの1人だ。少なくとも、上院は119人がこのような行為を受けたと発表した。そして次第に明らかになったところによると、少なくともこの119人のうち26人は、嘘の密告によって拘束された。しかし、このような人が実際に何人いたのかを知るのは事実上不可能だ。上院の調査によって、CIA職員の尋問は、外国の上空を飛行している特別機や、公海を航行している船舶の中で行われたことが分かった。常設の秘密刑務所は、アフガニスタン、イラク、タイ、モロッコ、ルーマニア、リトアニア、ポーランドに存在していた>(12月11日露国営ラジオ「ロシアの声」日本語版HP)
ロシアは、旧東欧社会主義国が米国の秘密刑務所を運営していることに神経をとがらしている。
<戦略的計画・予測研究所のアレクサンドル・グセフ所長は、米国は「おもてなし」に対してポーランド指導部に支払ったことを今はもう隠してはいないと述べ、次のようにコメントしている。
「現ポーランド指導部はもちろん、彼らの領内で行われていることをあらゆる手を尽くして否定するだろう。彼らは、これはCIAの特別刑務所であり、自分たちはとは何の関係もないと言っている。だが誰にでもわかるように、これらの刑務所の建設は、その国の指導部の同意なしには行われないはずだ。」>(前掲「ロシアの声」)
ここで興味深いのは、ロシアがCIAによる拷問自体は非難していないことだ。拷問を米国で行わず、外国の秘密刑務所で行っているのが、ダブルスタンダードだと批判しているにすぎない。
裏返して言うならば、ロシアのFSB(連邦保安庁)、GRU(軍参謀本部諜報総局)、内務省などは、ロシアの取り調べ施設や刑務所で、テロ容疑者や欧米のスパイ容疑者に対しては、拷問を含む、かなり厳しい取り調べが行われていることを示唆している。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優(まさる)/SANKEI EXPRESS)