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「視点ちょっと変えて」心豊かに 堤真一、尾野真千子 映画「神様はバリにいる」
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「若いころからどんなに監督に怒られても物怖じしないこの女はたいしたもんや」と大阪弁で語る堤真一さん(左)と尾野真千子さん=2014年11月10日、東京都港区(蔵賢斗撮影) プライベートでも飲み友達と口をそろえる堤真一と尾野真千子が、行きつけの酒場からバリへと河岸を変え、大酒を食らいながら、人生を豊かにするヒントを探そうと意見をぶつけあった。1月17日公開の正月映画「神様はバリにいる」(李闘士男監督)の原案はノンフィクション作家、クロイワ・ショウの人気シリーズ「出稼げば大富豪」。インドネシアのバリ島へ単身乗り込み起業するや、たちまち大富豪へと上り詰めてしまった大阪人で、現地の住民からは「アニキ」と慕われる実在の男性の豪快な生き方が描かれている。
アニキを熱演した堤は、この映画の狙いは金持ちになる方法の紹介ではないと釘をさし、また、他人を羨(うらや)ましがったり、妬んだりするのは愚の骨頂だと強調した。「『あなたは、あなた』なんだから、周囲の人間と比べて『大学出たんだけど、就職せなあかん』とか、悩んだり、迷ったりしては絶対にだめ。比較しないということが唯一無二の大切な心構えなんですよ。それを踏まえて、一度立ち止まって『自分が本当にしたいことは何か』、自分を見つめた方がいい。ちょっと勇気出して行動に移すだけで、今までとは全然違う縁が次々とできて、解決策が見つかることもあるんですよ」。
若い頃、俳優など気恥ずかしくて絶対にできないと考えていた堤は、さまざまな役者との出会いを経て、今では映画俳優として業界を牽引(けんいん)する立場となってしまった。不思議な縁で運命の輪が回り出すことを身をもって経験しているため言葉に熱がこもる。
一方、尾野の役どころは、会社の経営は火の車、従業員にも裏切られ、すべてに嫌気が差し、命を絶とうとバリ島へとやってきたキャリアウーマンの祥子(しょうこ)だ。「私の場合、何としても女優になりたかったし、そのために借金までしたこともあります。確固としたぶれない自分を持って、時には自分に優しく、時には厳しくしてあげられたら、周りが自分に何を欲しているのかが見えてくるかもしれません。その方が、周りの人も動きやすいだろうし、私のマネジャーも困ることはないでしょう」。自暴自棄になったときの尾野流の処方箋をユーモアたっぷりに披露した。
作中、アニキの手伝いをするようになった祥子は彼が放った独特な語録を片っ端からメモ帳に書き込み、今後の人生に生かそうと必死になる。だが語録といえば、「悲壮感が縁を逃す」「人生はドラゴン・クエスト(人気ロールプレーイングゲーム)や」「だじゃれは頭の回転をはようする」…といった即効性に疑問符が付くものばかり。堤と尾野は、いつ、誰がアニキ語録を口にするかによって、その効能はだいぶ違ってくるとの思いが強く、演じていても違和感があったらしい。「アニキ語録を実践したとしても、祥子の内面がことの外豊かになったわけではありません。『あ、そうか!』と考え方が少し変わったぐらいですものね」。尾野の正直な実感だ。
堤は、それこそがアニキの狙いではなかったか、とも思えてきた。「人生に行き詰まっていた祥子が、ほんの少しだけ世の中を違った角度から眺めてみることができた。そしたら、まるで違った世界が見えてきたじゃないですか。『こういう手もあるんやな』とか、『自殺なんていいやん。別の方法で生きてこ』とかね」
少しだけ違った角度から眺める-。思えば、大の仲良しの俳優、古田新太(あらた、49)から学んだ心を豊かにしてくれる特効薬にも通じるのではないか。「以前、古田と一緒に舞台に出演したとき、『俺、こいつは苦手だなあ』と思っていた男も共演していました。でも古田は『こいつは面白い』としきりに言うんですよ。試しに古田の視点で彼を観察してみると、確かに古田の言う通り。彼の面白さはそこか、と気づきましてね。すると、僕はお芝居をすることがとても楽になりました。自分のやり方や考え方に固執することも大事だけれど、時には他人の目線や脳みそを借りてみることが、もっと大事な場合もあるんです」
さて、新年を迎えた堤と尾野の夢はなんだろう。昨年、知命を迎えた堤は、自分にはまだまだ何か果たすべき使命があるに違いないと感じている。
「50歳を機会に僕の中の何かが変わるような気がしていたんですよ。僕が勝手に思っていただけですけれどね。仕事であれ、仕事以外のことであれ、僕は何かに興味を覚えたら、怖がらず、避けずに、じっくりと正面から向き合ってみようと思うんです。ちょっと深入りしてみようかな」
これに対し、尾野は自己実現へ向けてマイペースを崩さない。「お正月だからといって、何か特別な目標を立てようとは思いません。あるべき女優の姿を目指して、日々頑張ってきましたし、これからもそうありたい。だって、女優の仕事に『これだ!』という明確な終わりはありませんから。努力を続けていれば、また新しい課題に次々と出合うような気がするんです」(文:高橋天地(たかくに)/撮影:蔵賢斗/SANKEI EXPRESS)
インドネシアのバリ島。自ら立ち上げた婚活支援会社の経営に失敗し、多額の借金を背負った祥子(尾野真千子)は、何もかもが嫌になり、人生に終止符を打とうと断崖へやってきた。眼下の海へ飛び降りようとしたとき、現地で暮らす日本人、リュウ(玉木宏)から声をかけられ、導かれるままに「アニキ」と呼ばれるパンチパーマの中年男(堤真一)の山ごもりの元へ。
大阪出身のアニキは島へ渡り、無一文から不動産ビジネスを興して成功を収めた大富豪。行きがかり上、アニキのビジネスを手伝うことになった祥子は、最初こそ嫌悪感丸出しだったが、「視点を変えて生きる」というアニキのモットーを実践していくうちに、凝り固まっていた感情に少しずつ変化が生じる。