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【野口裕之の軍事情勢】日本国憲法とヒトラー日記の贋作完成度

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【野口裕之の軍事情勢】日本国憲法とヒトラー日記の贋作完成度

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GHQ民政局の素人集団が急ごしらえで日本に押し付けた日本国憲法。その文体・内容の格調の低さは贋作と呼ぶにふさわしく、完成度も劣悪だ  無国籍料理という看板を掲げるレストランは見かけるが、国柄を醸し出せぬ「無国籍憲法」を有する国家は日本以外にない。GHQ(聯合国軍総司令部)民政局の素人集団が6日6晩で急造し、日本に押し付けた日本国憲法草案の、特に前文については国際や米国内外の憲法/政治文書を寄せ集め、継ぎ足したのだから宜なるかな。文体・内容の格調の低さは贋作と呼ぶにふさわしい。ただし完成度は、名画の模写を得意としたドイツ人古美術商、コンラート・クヤウ(1938~2000年)が偽造したドイツ総統、アドルフ・ヒトラー(1889~1945年)の“直筆日記”と同程度。「大日本帝國陸軍による従軍慰安婦の強制連行」を国際社会に根付かせた希代の詐話師・吉田清治氏(1913~2000年)の著作・証言や、「現代のベートーベン」に成りすました佐村河内守氏(51)のパフォーマンスと比べると完成度は、はるかに劣る。

 「慰安婦」詐話の職人芸

 何しろ吉田・佐村河内両氏のウソは一手間も二手間もかかっていたが、日本国憲法前文には工夫すらなく、あまりに手口が大胆だ。例えば、前文のほぼ冒頭に組み込まれた一文。

 《われらとわれらの子孫のために…わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し…この憲法を確定する》

 次に紹介するアメリカ合衆国憲法前文と並べると、米国産米を炒め直して富士山型に固め、てっぺんに日の丸の小旗を付けたお子様ランチを想起する。

 《われらとわれらの子孫のために自由の恵沢を確保する目的をもって、ここにアメリカ合衆国のためにこの憲法を制定し、確定する》

 暴力・恫喝装置を完備した無法国家=中国や北朝鮮を「信頼」せよとそそのかす、憲法の背骨をへし折った部分も、聯合国軍最高司令官、ダグラス・マッカーサー米陸軍元帥(1880~1964年)が草案作成を担うGHQ民政局に対し命じた、守るべき3原則=マッカーサーノートの一つが横滑りしただけ。

 憲法前文《日本国民は…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した》

     ↑

 マッカーサーノート《日本は、その防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理念に委ねる》

 独立宣言やエイブラハム・リンカーン大統領(1809~65年)の演説も切り取り、日本国憲法に貼っ付けた。米国の価値観を国際法に優先させたのだ。そうでなければ《占領者は占領地の現行法律を尊重すべし》と定めた国際法=ハーグ陸戦条約(1907年改定)への違反を、いかに説明するのか。

 屈辱の歴史遺産ケンポー

 条文も酷い。国軍保有や、外部よりの武力攻撃/内乱/大災害といった国家緊急事態=憲法秩序侵害行為の排除に向けた非常措置条文が欠落。ほぼ全ての国の憲法が担保する根本を欠き、国家の存立/国民の権利を危うくしている。

 怪しさと欠陥を満載する屈辱の歴史遺産“ケンポー”を、日本政府も国民も放置し、あまつさえ「平和憲法」とたたえてきた。かくなる国家的犯罪のお先棒を担いでいるのが、反米なのに、なぜか米国が製造した憲法を護りたがる日本のメディア。反面、クヤウの犯罪はメディアを巻き込んだが、日本国憲法ほど国益を侵してはいない。

 クヤウは、ベルリンが包囲され降伏する直前、ドイツ軍が大量の記録を輸送機で密かに運び出したものの、連合軍機によりドレスデン近郊で撃墜された史実に着目。機内の《ヒトラー日記》は持ち出され、納屋に隠されたとのシナリオをでっち上げた。1935~45年までつづられた日記数十冊は81年、独大手出版社の記者に持ち込まれる。記者は実名を明らかにしなかったが、東独の将軍を兄弟に持つ裕福なナチス・グッズ収集家とのみ会社に説明→説得した。出版社は83年、200人もの報道陣を前に記者会見に踏み切るが、事前に鑑定士や科学者に真贋判定を依頼した。結局、当時のレートで9億円前後の巨費で買い取り、雑誌に掲載してしまう。ところが、判定用に専門家に送られた“ヒトラーの直筆”も、クヤウの手掛けた“作品”だった。記者も墜落現場?や操縦士の墓?を訪れ日記を信用。後に、クヤウ作の鑑定用“ヒトラーの直筆”を専門家に届くように仕組み、グルになる。しかも、出版社が払う報酬をクヤウへは少なく伝え、差額を懐に入れた。詐欺師同士の化かし合いである。

 独出版史上最悪の事件

 もっとも日本国憲法は70年近くも国民を欺し続けているが、世紀の大スクープは10日余りで化けの皮が剥がれ、独出版史上最悪のスキャンダルと化した。ドイツの警察当局や公文書館などが(1)45年以前には存在せぬ用紙/インク/ノリ/製本の縫い糸が使われていた(2)独特の筆圧と、左に傾斜するクセがない(3)ヒトラーは執筆が好きではなく、秘書への口述筆記が多かった…を暴いた。

 かくしてクヤウは追い詰められたが、ヒトラーを追い詰めたノルマンディー上陸作戦決行は前年の43年、米英ソ三国首脳らが臨んだテヘラン会談で合意。国連の基礎と成る戦後の世界平和維持機構なども意見交換された。テヘラン宣言いわく-

 《われらは、その国民が、われら三国国民と同じく、専制と隷従、圧迫と偏狭を排除しようと努めている、大小すべての国家の協力と積極的参加を得ようと努める》

 こちらも憲法前文に転用された。

 《われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ》

 テヘラン会談は、わが国の非武装国民と武装解除後の大日本帝國陸海軍将兵を大殺戮した、ドイツ降伏後のソ連参戦を密約した場でもあった。だまし討ちを決めた会議での約定がわが国憲法にすり替わったわけで、これ以上の屈辱があろうか。今こそ、国益を侵し続けてきた日本国憲法による《専制と隷従、圧迫と偏狭》を終わらせるときだ。

 ヒトラー日記を贋作とした証拠は前述したが、表紙のイニシャルをアドルフ・ヒトラー=AHとせずFHと描いた点も致命的だった。日本国憲法草案の表紙にダグラス・マッカーサーのイニシャル=DMがあるか否か、今一度確かめたくなった。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS

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