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科学
世界最大望遠鏡 要に日本の技術 ゼロ膨張ガラス 「宇宙で最初の星」観測目指す
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世界最大の望遠鏡「TMT」の完成イメージ(国立天文台提供) 宇宙で最初に生まれた星の観測を目指す世界最大の望遠鏡「TMT」が米ハワイ島のマウナケア山に建設されている。2022年3月の完成に向け、望遠鏡の要となる巨大な主鏡(直径約30メートル)を製造するのは相模原市の特殊ガラスメーカー「オハラ」だ。気温によって影響を受けるガラスの膨張を極力抑えた高い技術力が世界の注目を集めている。
TMTは東京・国立天文台が米国、カナダ、中国、インドの4カ国と進める国際共同プロジェクト。136億光年も離れた遠くの天体から届いたかすかな光を集めるTMTの主鏡は1辺72センチの六角形の鏡492枚を組み合わせて作られる。オハラは2019年度までに予備を含めた特殊ガラス574枚を準備しなければならない。
主鏡用のガラスにとって最大の敵は気温の変化による膨張だ。ガラスがゆがむと正確に集光できず、画像が“ピンぼけ”となってしまう。そのために温度変化の影響を受けない「ゼロ膨張ガラス」は欠かせないが、製法が難しく、これまで米独の2社が事実上独占していた。
オハラは1935年創業で、人類で初めて有人月面着陸した米アポロ11号に搭載された観測装置の光学ガラスを製造するなど国内外で実績があり、2013年度の国内シェアは6割近い。
ゼロ膨張ガラスの開発は25年ほど前から始め、製法の確立に約2年を要した。ゼロ膨張ガラス「クリアセラム」は温度が上昇した場合に収縮する結晶を配合。ガラスによる膨張が結晶による収縮で相殺され、熱による変形を防ぐことに成功した。温度が10度上がっても長さ5キロのクリアセラムが1ミリしか伸びないほどの精度だ。
国立天文台は1999年、マウナケア山に「すばる望遠鏡」(直径8.2メートル)を設置し観測を開始。オハラも受注を目指したが、米国企業に奪われた。望遠鏡の鏡は口径が大きいほどわずかな光も捉えられるため、直径約30メートルのTMTは光を集める力がすばるの約13倍、解像度は約4倍になる。オハラは今回の採用で雪辱を果たした格好だ。
TMT計画を推進する国立天文台の臼田知史教授(46)は「オハラの技術は、ノーベル賞級の発見を目指すTMTが求めた水準を満たしている。日本人同士で意思疎通もしやすい」と採用を歓迎する。オハラの南川弘行・特殊品営業課長(44)は「大型望遠鏡で採用されるガラスは最先端でなければならず、米独2社にようやく追いついた。科学を通じて人類に貢献できることは誇り」と、完成を心待ちにしている。(小野晋史/SANKEI EXPRESS)