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惑星探査競争 日本、技術力で挑む 「あかつき」金星の周回軌道へ 「MMO」水星の解明目指す
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金星探査機「あかつき」の想像図(JAXA、池下章裕氏提供) 昨年12月に宇宙へと旅だった宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」に続き、今年から来年にかけて日本の探査機が相次いで惑星に向かう。惑星探査は米国が世界を圧倒してきたが、日本や欧州などが技術力を高め、成果を競う時代に突入した。
現在、探査が最も盛んなのは火星だ。米欧、インドの計7機がひしめく。さらに欧州とロシアが共同で来年と2018年に打ち上げ、米国も後続機を次々と送り込む。
日本は03年に火星探査機「のぞみ」の軌道投入に失敗したが、復旧への努力を通じて運用技術を高めたことが後の初代「はやぶさ」の帰還につながった。会津大の寺薗淳也准教授(惑星科学)は「惑星探査は米国がリードしつつも、日欧などが競う時代に入った」と話す。
日本が注力するのは金星と水星。まず金星探査機「あかつき」が、年内にも周回軌道への投入に再挑戦する。JAXAが10年に投入を試みたが、エンジンの破損で失敗した。現在、金星の公転軌道付近を回っており、金星に再び接近するタイミングを狙う。二酸化炭素の厚い大気と硫酸の雲に覆われ、秒速百メートル級の強風が吹き荒れる特異な惑星の様子を詳しく調べる。
来年7月には、欧州と共同の水星探査計画「ベピコロンボ」の探査機が欧州のロケットで打ち上げられる。JAXAの磁気圏探査機「MMO」は24年に水星に到着し約2年間、磁場や磁気圏を詳しく調べ、水星の内部構造などの解明を目指す。
はやぶさ2が目指す小惑星も各国の重要な探査目標だ。太陽系の歴史や生命の起源に迫る成果が期待できるためだ。米国は来年9月に小惑星探査機を打ち上げる。はやぶさ2の国中均プロジェクトマネージャは「日米は採取した物質の相互提供などで協調する一方、激しい競争関係にもある」と話す。
日欧などが力をつけてきた惑星探査だが、総合力で米国の優位は揺らぎそうにない。今年の一大イベントは米航空宇宙局(NASA)の探査機「ニューホライズンズ」による史上初の冥王星到着だ。今月15日に観測を開始し、7月中旬に最接近する予定だ。
2月にはNASAの探査機「ドーン」が火星と木星の間にある小惑星帯の最大の天体、準惑星「セレス」に到着。来年7月には木星に探査機が到着するなど大型計画がめじろ押しだ。
日本の課題は今後の長期戦略の構築だ。月や火星の探査、木星の軌道にある別の小惑星にはやぶさ2の後継機を投入する案などが研究者の間で議論されているが、水星探査以降の具体的な計画はない。
来年度から10年間の政府の宇宙基本計画案は、安全保障分野での宇宙利用に重点を置き、惑星探査は「今後も一定規模の資金を確保し推進する」などとし、優先度は低い。寺薗准教授は「日本は月周回衛星かぐやとはやぶさで得意技を身につけた。それを維持、発展させるには探査の継続が欠かせない」と話している。(SANKEI EXPRESS)