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【勿忘草】日本代表の「機器」

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【勿忘草】日本代表の「機器」

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大勢の人が見守る中、小惑星探査機「はやぶさ2」を搭載して打ち上げられるH2Aロケット26号機=2014年12月3日午後1時22分、鹿児島県・種子島(共同)  小惑星探査機「はやぶさ2」が3日、宇宙に旅立っていった。これから4年の歳月をかけて小惑星「1999 JU3」にたどり着き、小惑星表面の物質に加え、人工クレーターを作って内部の物質も採取し、順調にいけば2020年に地球に持ち帰る計画だ。

 イオンエンジンや姿勢制御装置、通信アンテナ…。進化した精緻な機器の数々に、「ものづくり」に生きる技術立国・日本の誇りがうかがえる。

 10年、初代「はやぶさ」が7年ぶりに地球に帰還したときは日本中が熱くなった。姿勢制御装置の故障など相次ぐトラブルで満身創痍(そうい)になりながら大気圏突入を果たしたときには涙したものだ。「はやぶさ君」と呼ばれていたっけ。

 この帰還フィーバーを取材した記者が専門家から聞いた話によると、機械にあだ名をつけたりして仲間意識を持つ国民は世界でも珍しいらしい。技術立国・日本は「ものづくり」に並々ならぬ愛情を込める国民といえよう。

 先日、埼玉県春日部市の首都圏外郭放水路を見学した。中小の河川の洪水を地下に流し込み、地下50メートルに掘ったトンネルを使って水を江戸川に流す地下放水路である。圧巻は水をためる調圧水槽で、116段の階段を下りた地下に、幅78メートル、長さ177メートル、高さ18メートルもの空間が広がる。59本の太い柱が支えるさまは、ギリシャのパルテノン神殿のよう。

 とはいっても観光名所でもなく、排水をする施設である。それなのに調圧水槽や、この日の見学会で特別に公開されていた水を排出するポンプ室に、見物人が目を輝かせている。歩き回り、写真を撮りまくり、係員の説明にも真剣に聞き入る。

 もう、対象は施設でも、機器でもないのだ。技術立国・日本のものづくりで生み出されたそれは、すでに心を持った生き物と化している。だから、「頑張っているな」「一生懸命働いてくれている」という気持ちで愛でる。工業地帯の工場見学が人気なのも、働いているお父さんのような一生懸命さと美しさを感じ取るからだろう。

 「はやぶさ2」の帰還予定の20年は東京五輪の年だ。日本人は代表選手を応援するのと同じように、再び、帰還する「はやぶさ2」に大声援を送るに違いない。(小川記代子/SANKEI EXPRESS

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