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科学
「日本の技術」結集 6年52億キロの航海 「はやぶさ2」軌道投入、打ち上げ成功
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大勢の人が見守る中、小惑星探査機「はやぶさ2」を搭載して打ち上げられるH2Aロケット26号機=2014年12月3日午後1時22分、鹿児島県・種子島(共同) 小惑星探査機「はやぶさ2」を搭載したH2Aロケット26号機が3日午後1時22分4秒、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。1時間47分後に高度約900キロで予定の軌道に投入され、打ち上げは成功した。地球から約3億キロ離れた小惑星「1999JU3」に向かい、生命の起源や太陽系誕生の謎を解く試料を採取し2020年の地球帰還を目指す。
「はやぶさ2の宇宙航海がようやく始まった」。プロジェクトを統括する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の国中均・プロジェクトマネージャ(54)は、打ち上げ成功後の会見でこう語った。6年間の総航行距離は約52億キロに及ぶ。
はやぶさ2は、世界初の小惑星からのサンプルリターン(試料回収)を成功させた「はやぶさ」の後継機。
軌道に投入されたはやぶさ2は現在、毎秒数キロの速さで地球から離れている。予定通り太陽電池パネルを展開し電力を得ており、電波の受信も確認した。初代はやぶさで故障した姿勢制御装置も正常に作動し安定している。搭載機器も正常だ。
今回目指す小惑星は地球と火星の間の軌道で太陽の周りを回っていて、はやぶさ2も太陽の周りを3周しながら小惑星に近づいていき、18年夏ごろに到達する予定だ。
そこには有機物や水が存在するとみられている。小惑星は四十数億年前の太陽系初期の姿をとどめているが、地表の物質は宇宙線を浴びて変質している。このため、金属の塊を発射して衝突させ人工クレーターをつくる新開発の装置を搭載。小惑星内部にある風化していない物質の採取を目指す。
生命の材料となった有機物や地球の海水は、小惑星の衝突によって地球に運ばれたとされる。採取した物質を分析すれば生命の起源や太陽系の歴史を解明する手掛かりが得られる。
03年に打ち上げられたはやぶさは、イオンエンジンや姿勢制御装置の故障、通信の一時途絶などさまざまな困難を乗り越え、7年60億キロの旅を経て小惑星の試料を持ち帰り、世界中を驚かせた。
難度がさらに高い地下の物質回収を目指すはやぶさ2には、日本企業が誇る、“ものづくり”の技術の粋が結集しており、宇宙開発における日本の存在感を改めて世界に示す好機だ。
成功の鍵は、故障が相次いだ初代の反省を生かせるか。探査機の姿勢を制御する「スラスター」を担当した三菱重工業では、部品の一体形成を増やして強度を上げた。IHI子会社のIHIエアロスペースは、小惑星の表面に人工のクレーターを作る装置を開発。住友重機械工業はサンプル採取装置を製作した。先端部分に爪状の部品を付け、地表サンプルをすくい上げやすくしたという。
機体の設計・製造を行ったNECは、イオン化した燃料を高速で噴射し推進力を生み出す「イオンエンジン」の性能を25%アップした。
それでも、困難な旅となるのは間違いない。NECの萩野慎二プロジェクトディレクターは「初代と同じ条件の探査なら大丈夫だが、別の星に行く以上、新たな問題に遭遇するだろう」と気を引き締めた。(SANKEI EXPRESS)