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火星の水なぜ消えた MAVENが探る 周回軌道に到着 「高層大気」観測へ

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火星の水なぜ消えた MAVENが探る 周回軌道に到着 「高層大気」観測へ

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火星に到着した米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「メイブン(MAVEN)」の想像図(NASA提供・AP)  太古の火星で起きた気候変動や環境の変化などを調査する米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「メイブン(MAVEN)」が米時間の21日(日本時間22日)、火星の周回軌道に到着した。今後、火星を取り巻く高層大気の調査に初めて着手する。NASAでは2030年代半ばまでの実現を目指す有人火星探査でメイブンが集めた大気情報を活用するほか、地球に類似点が多いとされる火星の大気の分析を通じて、人類にとって最も深刻な問題となっている地球温暖化の原因解明にも役立てたい考えだ。

 科学界最大の謎の一つ

 NASAの公式サイトやAP通信などによると、メイブンは昨年11月18日にフロリダ州のケープカナベラル空軍基地から打ち上げられ、約10カ月後の21日午後10時24分(米東部夏時間)、火星の周回軌道に無事、到着した。総飛行距離は約7億キロにも及ぶ。

 NASAのチャールズ・ボールデン長官(68)は、「将来の有人火星探査に向け、重要な情報をわれわれにもたらすだろう」とその意義を強調。「メイブンの調査によって、火星の大気やこれまでの気候変動の歴史、そしてこれらが火星の地表変化に与えた影響について、われわれの理解度を大きく向上させるだろう」と気候変動のメカニズムに関し、何らかの情報が得られることに期待感を示した。

 科学者たちは30億年前の火星は地球に似た水が豊富な惑星だったと考えている。そんな火星から大気(二酸化炭素)や水がなぜ消えたのかは、世界の科学界における最大の謎の一つと位置づけられている。

 NASAでメイブン計画を担当するブルース・ジャコスキー主任研究員は「今の火星の大気は冷たく乾燥しており、地表には液体の水が安定状態で存在できないが、太古の火星の地表には水が流れていた痕跡がある」と指摘。なぜ過去には存在できた水が今の火星では地表に安定状態で存在できなくなったのかの謎を解く鍵は火星の高層大気にあるとみて、メイブン計画に踏み切った。

 地球温暖化防止の糸口

 太陽電池パネルを備えた全長約11メートルのメイブンは、これから6週間かけて観測・調査機器の稼働準備や確認作業に入り、その後、約1年間にわたり高層大気に含まれる大気の成分や構成、イオン成分などを分析する。

 同時に、火星の大気と太陽風の相互作用や、火星の大気の宇宙空間への流出過程などの解明にも努める。また、火星の高層大気の状況を週1回のペースで地球に送信するという。

 NASAではこうした観測・調査によって、温暖で水が豊富だった太古の火星が大気を失い、赤茶けた地表に変貌した謎に迫りたいとしている。NASAが火星探査に血眼になるのは、四季があったり、1日の長さが地球とほぼ同じであるなど、火星は太陽系の惑星で最も地球に似ていることも大きい。仮に地表の水がなくなったのが温暖化によるものであるとするならば、そこには地球の温暖化を防ぐための糸口となるデータが隠されているかもしれないのだ。

 火星にはメイブンを除き、NASA2機、欧州宇宙機関(ESA)1機の計3機の無人探査機が周回軌道を回り、NASAの無人探査車2機が地表で調査を続けている。24日にはインドの無人探査機もアジアでは初めて火星の周回軌道に到着する予定で、各国による火星探査が熱を帯びている。(SANKEI EXPRESS

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