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【仏紙銃撃テロ】「不屈」「挑発」 預言者風刺画掲載に賛否 仏紙銃撃後初の発行、500万部に
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仏南部ニースの売店で1月14日、風刺週刊紙「シャルリー・エブド」の最新号を買うために並ぶ人々。店頭に置かれた最新号では、預言者ムハンマドの風刺画が1面に掲載された=2015年(ロイター) フランスの風刺週刊紙シャルリー・エブドは14日、銃撃事件後初の発行となる最新号を発売した。イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を1面に掲載することでテロに屈しない姿勢を示した。短時間で売り切れたため、発行部数を300万部から500万部に増やすことを決めた。市民からはテロへの「不屈」の姿勢を示すために、預言者の風刺画掲載は必要との支持の声が上がる一方、イスラム教徒らは「挑発」と批判しており、表現の自由をめぐる溝の大きさを改めて示した。
最新号の1面を飾ったのは、ムハンマドがシャルリー・エブド紙への連帯を示す「私はシャルリー」との標語が書かれた紙を手に持って涙を流す絵柄で、「すべて許される」との見出しがついている。紙面では襲撃犯の兄弟、サイド・クアシ(34)、シェリフ・クアシ(32)の両容疑者の風刺画も掲載された。最新号は仏語、イタリア語、トルコ語の各版が発行され、サイト上では英語、アラビア語、スペイン語でも読める。
パリ市内各地の売店ではこの日早朝から、購入しようとする市民が開店前から列をなした。
「売り切れるかと思ったが、買えてよかった」。14日早朝、パリ中心部のレピュブリック広場の売店で最新号を買った男性看護師(47)は笑顔を見せた。
この売店では開店直前、すでに100人近くの市民が並んだ。「シャルリーに連帯感を示す」「悲惨な事件を記憶にとどめる」。市民らは暗い早朝から待った動機をこう語った。
最新号の1面を飾ったムハンマドの風刺画について、男性看護師は「勇気がある」と評しつつ、「これは問題ないのではないか。ムハンマドが(見出しのように)『すべて許される』と言っているのだから」。
ある研究所の女性職員はムハンマドの風刺画を載せたことについて「避けられなかっただろう」と推察する。掲載を見送れば、テロリストに屈したととられかねないためだ。女性職員は「異なる宗教間でも話し合えるのがフランスだ」とイスラム教徒に理解を求めた。
だが、イスラム教徒の認識は異なる。いかなる容姿でも、ムハンマドの偶像化は禁じられているためだ。「私は表現の自由を支持する。だが限度がある。他人を尊重すべきだ」。そう語るアルジェリア出身の男性警備員(49)は風刺画をみて手を振るわせた。事件から1週間。「まだ喪に服しているときに、なぜこんなことをするのか」と表情を曇らせた。
風刺画をめぐるトラブルを避けるため、イスラム教聖職者らは「冷静さを保て」と呼びかける。だが、モロッコ系の男性店員(25)は「明らかに挑発だ。僕の周りには、風刺画を描いた人を殺せば天国に行けると考えている人もいる」と話した。
一方、イエメンの国際テロ組織アルカーイダ系武装組織「アラビア半島のアルカーイダ(AQAP)」は14日、銃撃事件に対する犯行声明をインターネット上に掲載し、事件について「預言者の復讐だ」と主張した。(パリ 宮下日出男/SANKEI EXPRESS)