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寝台特急「北斗星」引退…さまざまな思い 旅人乗せ、青く輝き続けた27年
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有珠駅近くの撮影スポット、通称「S字」には連日多くの鉄道ファンが訪れる=2015年1月19日、北海道伊達市(鈴木健児撮影) “最後のブルートレイン”寝台特急「北斗星」が、北の大地をさっそうと駆け抜けた。雪に覆われた有珠山を背景に、車体は太陽に照らされて青く光り輝き、圧倒的な存在感と美しさを誇示した。
北斗星は青函トンネルの開業に合わせて1988(昭和63)年3月、上野(東京)-札幌(北海道)間の約1214キロを直行する列車として運行を開始して今年で27年余。北海道を旅する人たちや、上京する学生などさまざまな思いを運び、走り続けてきた。
車両の老朽化と北海道新幹線開業に向けた工事や検査作業などで、運行ダイヤの確保が難しいことなどから今年3月で定期運行を終える。夏までは臨時運行するが、8月22日札幌発の上り列車を最後に、完全な廃止が決まった。
「北斗星」の引退は、青い客車の寝台特急「ブルートレイン」の消滅も意味し、ファンの間では惜しむ声が高まる。
午後7時3分、上野発の北斗星に乗り込んだ。平日ながらホームには多くのファンが集まり、写真撮影などをしていた。乗客定員は217人、連日満席が続く。
7号車の食堂で夕食を取ったり、6号車のロビーで流れる夜景を眺めたり、ひと通り車内を散策した。客室や洗面台、トイレなど型は古いがどこかレトロな列車の雰囲気が漂っていた。
走行の震動に揺られながらベッドに横たわった。仙台を過ぎて日付が変わり、しばらくウトウトしていると早朝に青函トンネルを通過し、北海道へ入った。車窓から朝焼けを拝み、函館から先は駒ケ岳などの雪景色が広がった。
函館から室蘭まで約200キロは非電化区間で架線がなく、午前中の光線の良い時間を走行するため、絶好の撮影スポットとなっている。
通過する際には沿線でカメラを構えた鉄道ファンらの姿が車内から多数確認できた。
食堂車で朝食を食べたり、ロビーで会った乗客との会話を楽しみながらゆったりとした時間を過ごした。雪の影響もあり1時間遅れて、正午過ぎに札幌駅に到着。約16時間+αの小旅行が終わった。
神奈川県茅ケ崎市の西迫雄己(にしざこ・ゆうき)さん(38)は長男、陽希(はるき)君(6)と乗車。「小学生の頃、“ブルトレ”に乗って何度も九州の祖父母の家に行った。向かい合った夫婦と話したり、お菓子をもらって食べた記憶が懐かしい。自分の息子にもこの経験をさせたかった」と話す。
車掌の斎藤洋治郎さん(35)は「小さな頃から北斗星に乗りたいと憧れ、念願かなってJR北海道の車掌になりました。私個人としては北斗星の引退はとても寂しいですが、残りわずかな期間、お客さまにゆったりとした時間を過ごしていただきたい」と言いながら帽子を整えてはにかんだ。
ブルートレインと呼ばれて、およそ半世紀。かつて、日本全国の都市を結んだ寝台特急列車の終点は、8月23日朝の上野駅になる。北斗星27年、ブルートレイン57年の歴史にピリオドが打たれる。(写真・文:写真報道局 鈴木健児/SANKEI EXPRESS)