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【USA! USA!】(12)ワシントン州シアトル 「新旧」の文化が同居する街

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【USA! USA!】(12)ワシントン州シアトル 「新旧」の文化が同居する街

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巨大なトーテンポールがそびえるカジノ・リゾート「チュラリップ」。館内には先住民の文化を感じさせるさまざまな工芸品が展示されている=2014年10月17日、米ワシントン州シアトル(緑川真実さん撮影)  シアトル郊外のカジノ・リゾート「チュラリップ」に入ると、天井まで届く背の高い複数のトーテムポールに圧倒される。もとは北米の先住民が建てた柱状の木の彫刻。施設内は、ネーティブアメリカンの文化を伝える資料や絵画、置物であふれている。

 「チュラリップ」とは、シアトル周辺に住む先住民族の集合体の名前。2008年にオープンした施設はホテルに結婚式場、室内プール、エステサロン、ビジネス用の会議室も備えた総合リゾートだ。経営母体は先住民で、スタッフも先住民を多く雇用する。居留地に住む先住民が、保護政策のなかで得た権利で運営するカジノの一つでもある。

 「ラスベガスまで行かなくてもカジノが楽しめる。家族でくつろげる雰囲気を目指しており、最近はアジア系のお客さまも増えてきました」と、広報担当のアンドリュー・スネイブリーさんは話す。「食事やサービスのレベルは高い」(在留邦人)と地元でも評判だ。

 シアトルのあるワシントン州はノースウェストコーストと呼ばれる先住民族の文化圏に入る。先住民が北米大陸に来たのは1万年以上も前とされ、ワシントン州の地名や地域には、先住民がつけた名称が残る。

 「シアトル」は、部族の酋長(しゅうちょう)の名前を英語に置き換えたものだ。シアトルのウオーターフロントから1時間ほど船で行ったブレイク島には、こうした文化を伝える観光施設ティリカム・ビレッジがある。サーモンを炙った伝統料理が振る舞われ、先住民文化を伝えるショーが行われている。「ティリカム」は「フレンドリー・ピープル(親しみある人々)」の意味だという。

 ≪「居心地の良い大都市」模索≫

 先住民文化の保存につとめるシアトルは、米航空大手ボーイング社が約100年前に創業、本社を構えたことで大きく発展した。いわば「新旧が同居する街」だ。

 シアトルの市街地から40キロほど行ったボーイング社のエバレット工場では、最新鋭機787型機などが製造されており、世界中から航空ファンが集まる。巨大な格納庫のような工場は独特の威風を感じさせる。見学者はカメラやノートはもちろん貴重品まで私物を全て預け、手ぶらで臨まなければならない。かつて見学者が製造中の飛行機に物を落として傷つけ、補修に巨額の費用がかかったためだという。

 工場内で巨大な飛行機が少しずつ形となっていく姿は圧巻で、写真に収められないのは惜しい。そんなファン心理にこたえるため、見学後には工場内の資料画像を背景に記念撮影できる無料のサービスがある。

 敷地内の駐機場では、完成したばかりの飛行機が納入を待つ。欧州、日本から中央アジアまで世界中の航空会社のロゴが描かれた機体が並ぶ。「日本も飛行機を作るんですって? どんな飛行機なのかしら」とボーイング社広報のジョアンナ・ピックアップさん。三菱重工業が開発中の国産旅客機「MRJ」への関心は高かった。

 1916年にシアトルで創業したボーイング社は、軍需産業を牽引(けんいん)して周辺産業を育成した。70年代以降のオイルショックによる経済低迷を機会に、シアトルでは産業の多角化を図る動きが進み、アマゾン・ドット・コムやスターバックスなど世界的な大企業が本社を構え、ニューヨークやロサンゼルスのような大都市となる道を歩んでいった。

 だが、2008年のリーマン・ショック以降、都市の様相が変わり始めている。近年はポートランドの影響で、都市計画や暮らしの質の向上に目を向ける風潮が広がってきた。

 市街地ではいま、路面電車の整備が進む。車社会のなかで大きくなった都市が、あえて車道を小さくして線路を敷くのは、環境への負荷を軽くするためだ。海沿いの高速道路は補強工事の真っ最中だった。東日本大震災の被害を見ての対策という。最近ではシアトル市が政策的に起業支援を強化、IT系の起業が増えつつある。

 人間味あふれた居心地の良い大都市。シアトルが目指す道筋はそんな方向になりそうだ。(文:藤沢志穂子/撮影:フリーカメラマン 緑川真実(まなみ)/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■シアトル・ワシントン州観光事務所 www.seattlewa.jp(日本語)

 ■知られざるアメリカを紹介する公式ガイドサイト。ディスカバー・アメリカ www.discoveramerica.jp

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