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【USA! USA!】(6)イリノイ州ガリーナ 米国で一番すてきな小さい街
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シカゴなど近郊都市やカナダなど、国内外から訪れる観光客でにぎわいをみせるメーンストリート=2014年10月11日、米イリノイ州ガリーナ(緑川真実さん撮影) 米ミシガン湖畔の大都市シカゴから車で3時間、人口3500人ほどの小さい街ガリーナが近年、急速に注目度を上げている。ミシシッピ川の支流、ガリーナ川沿いに広がる街には、19世紀の街並みが残る。
「America’s Best Small Town(米国で一番すてきな小さい街)」とのキャッチフレーズを持ち、昨年1年間で国内外から100万人以上が訪れた。紅葉の美しさでも知られる。
ガリーナの地名は鉛の一種に由来する。19世紀にフランス人が入植し、その採掘と交易の中心地として栄えた。最盛期には1万4000人の人口があったが、需要の停滞とともに過疎化が進む。危機感を持った街は、1980年代に観光を主な産業としようとかじを切った。
まずはこの街に住んでいた米国の第18代大統領、「50ドル札の顔」でもあるユリシーズ・グラントの家を博物館に改装した。続いて19世紀当時から残る建物を保存。中心部では建造物の新築を原則として許可しない方針をとった。
2010年には、街の将来像を考える「2020年ビジョン」検討会が発足、ウェブサイトなどを活用した観光客の誘致活動を強化した。リーマン・ショック後の不景気からも回復、現在はアジアからも観光客が増えている。2016年にはアムトラックの停車駅となる見通しで、駅舎の整備が進んでいる。
≪大地の恵み生かし特産品 ビジネスチャンスにも≫
19世紀の町並みが残るメーンストリートは、端から端まで歩いても15分程度。通りにはホテルも商店も、大きなチェーン店は見当たらない。そのかわりに手作りアクセサリー店、ワインやチョコレート、地場のニンニク専門店など素朴な店が並ぶ。ヨーロッパの田舎町のような雰囲気だ。
街中には観光用の赤いトロリーバスが走る。10月初旬の平日の昼は、年配の観光客で満席だった。民家の軒先には星条旗がはためく。古き良き時代を大切にする住民たちにとって、国旗を掲げるのはごく自然な行為だ。リタイア後に永住する米国民も多い。
「昔を懐かしみに来る人が多い。でも冬は郊外でスキーもできるから、若い人たちもたくさん来ます」と市観光局のセルスティーノ・ラフィーニさん。10月だけでもアートフェスティバル、ハロウィーンパレードなど、さまざまなイベントを企画し、幅広い世代の観光客誘致に知恵を絞る。
観光地としての魅力が高まるガリーナは、ビジネスチャンスを秘めた街でもある。1980年代初めにアイルランドから移住したジャック・コールターさん(52)はレストラン3件とロッジを経営する。「雰囲気がアイルランドにそっくりで気に入った。観光客が多いので事業は順調。リーマン・ショック後の不景気は回復してきたので、新規事業も考えたい」と話す。
街のさらなる魅力は、イリノイ州の豊かな土地から得られる作物を生かす「メード・イン・ガリーナ」の産品が多いこと。ワイナリーが郊外に点在するほか、市街地には街唯一のウイスキー醸造所「ブルーム・ブラザーズ・ディストレリー」がある。イリノイ州出身のマシュー・ブルームさん(36)が弟(32)と昨年12月に起業した。
マシューさんは日本人留学生も多い米サンダーバード大で経営学修士(MBA)を取得、観光客が急増中のガリーナに目をつけた。現在はイリノイ州で採れるトウモロコシやライ麦や大麦、小麦を使い、ブレンドウイスキーを仕込んでいる最中で、観光客向けの見学ツアーも行っている。マシューさんは「『メード・イン・ガリーナ』のウイスキーはいいお土産になる。将来は英国や日本にも輸出したい」と夢を語る。
できれば若い人も集まる街にしたい。そう願う市の関係者は、白亜の一軒家を売りに出した。価格は27万ドル(約3000万円)で購入する若い家族が、街に移住することを想定している。「都会でアパート買うよりはるかに安いと思うんだけど。東京よりも安いでしょう? 買わない?」。市観光局のセルスティーノさんがウインクした。(文:藤沢志穂子/撮影:フリーカメラマン 緑川真実(まなみ)/SANKEI EXPRESS)
■イリノイ州の情報サイト(日本語版) mrcusa.jp/states/illinois/
■知られざるアメリカを紹介する公式ガイドサイト。