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社会
【USA! USA!】(2) 愛される小学校 「循環型」拠点に
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地元の食肉を使ってハムやソーセージを作る食肉加工所は、小学校の元ロッカールーム。だから、いまは「ミート・ロッカー」と呼ばれる=2014年5月16日、米コロラド州コロラドスプリングス(ディスカバー・アメリカ撮影) さまざまな成分を含む鉱水=スプリングスの湧出がそのまま地名になったコロラドスプリングスは、その鉱泉の効用からかつては結核治療の保養地として知られた。いまではロッキー山脈の麓に広がる山岳リゾートとして人気を集め、42万人が暮らすコロラド州第2の都市だ。アメリカオリンピック委員会(USOC)が本部を置くマウンテンスポーツの街でもある。
そんなコロラドスプリングスに、とってもクールなコミュニティースペース「アイビーワイルド・スクール」がある。地元の人々に愛されながらも2009年に廃校になった小学校。その跡地を、向かいにあった気鋭の地ビール醸造会社「ブリストル・ブリュワリー」が買い取り、地元の人々と一緒になって地産地消を基本に食事やアルコールを楽しめるコミュニティースペースを作り上げたのだ。
太陽光など自然エネルギーを生かしながら地元産の肉や野菜で料理を作り、醸造したてのビールを飲む。人々がわいわいと楽しそうに集まってくる空間は、生産から消費まで自分たちの目が届くところで成り立たせようとする循環型コミュニティーの実験室だった。
≪校長室で酒を味わい 職員室で語らう≫
コミュニティースペース「アイビーワイルド・スクール」の玄関に足を踏み入れると、歴史ある小学校のぬくもりが伝わってくる。コロラドスプリングスは1890年代に最高峰のパイスピーク(4301メートル)に連なる峡谷で砂金が見つかり、ゴールドラッシュに沸いた。小学校が設立された1916年は、そんな西部開拓時代の空気が色濃く残っていたそうだ。
「廊下の天井や壁は、小学校だったときのデサインをそのまま生かして改装したのよ」
そう話しながらスタッフのクリスティーナ・ブロズリーさんが最初に案内してくれたのは、「ザ・プリンシパル・オフィス」(校長室)と呼ばれているバーだ。ビールやカクテルはもちろん、地元で蒸留したコーン・ウイスキー(バーボン)も楽しめる。かつての職員室は、太陽の光がたっぷり差し込むカフェに様変わりしていた。
廊下を挟んだ向かいには、地元産の肉や野菜でハム、ソーセージといった食肉加工品や、ミートパイ、焼き菓子などを地元の人々が手作りする工房がある。クリームをたっぷり使ったカップケーキはとても甘く、多くのアメリカ人にとって「子供の頃、おばあちゃんが作ってくれたお菓子」と感じる懐かしい一品だそうだ。
小学校の跡地を買い取った地ビール醸造会社「ブリストル・ブリュワリー」のオーナー、マイク・ブリストルさん(45)は、20代を日産自動車のセールスマンとしてフロリダ州で過ごし、そのころからおいしいビールを飲みたくて自宅でビールを醸造していた。不景気で自動車が売れなくなって故郷のコロラド州に帰ることを決めたとき、趣味のビール作りを生かして起業した。コロラドスプリングスを選んだのは、街の規模がそれほど大きくなく、ビール会社として地元に溶け込みやすいと考えたからだという。
それから18年-。「たまたま醸造所の向かいにあった小学校が廃校になり、『校舎を残したい』と希望する地元の人たちに勧められて買い取った。地元産のおいしいものを作って食べてみんな楽しそうだし、自分が作ったビールを飲んでくれる人も増えた。これでよかったよ」
すっかり地元の人々に愛されるビールの作り手となったブリストルさんは、リラックスした笑顔をみせた。(ディスカバリー・アメリカ編集部、写真も/SANKEI EXPRESS)
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