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【USA! USA!】(8)イリノイ州シカゴ ライト設計、「パパ」が育った屋敷町

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【USA! USA!】(8)イリノイ州シカゴ ライト設計、「パパ」が育った屋敷町

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フランク・ロイド・ライトの設計の一番の特徴は、自然と調和したプレイリー・スタイル。深い庇(ひさし)や低い屋根で水平性を強調、屋内は壁を解き放ち、開放的な空間を演出している。その初期の代表作が銀行家、アーサー・B・ヒュートレイ邸宅で、1902年に竣工(しゅんこう)した=2014年10月14日、米イリノイ州シカゴ郊外のオークパーク(緑川真実さん撮影)  イリノイ州の玄関口シカゴ郊外、約20キロの地にある高級住宅街オークパークは、米国を代表する2人の文化人ゆかりの地としても知られる。日本では帝国ホテル旧本館の設計者として知られる建築家、フランク・ロイド・ライト(1867~1959年)と、小説「老人と海」などで知られるノーベル賞作家、アーネスト・ヘミングウェー(1899~1961年)だ。

 オークパークは、ウィスコンシン州出身のライトが1889年に結婚して移り住み、独立して事務所を構えて壮年期を過ごした場所。ライトの一番の特徴は、自然と調和したプレイリー・スタイル(大草原に建つ家)で、オークパークには設計を手がけた約30軒ほどの邸宅が立ち並ぶ。訪ねた10月中旬は紅葉が始まった時期で、小雨の霧けぶる中で静かなたたずまいを見せていた。

 邸宅の多くは一般市民が住んでおり非公開だが、旧ライト邸と事務所は見学できる。屋内では、日本文化を好んだライトの趣味をうかがわせるデザインが多数みられるほか、1905年に日本に渡航した際のパスポートも展示されている。

 ライト邸にほど近い場所に、ヘミングウェーが1899年に生まれた家が博物館となっている。ヘミングウェーは高校卒業までオークパークで過ごし、その後カンザスシティーの新聞社に就職した。だが生前オークパークについて書いたものは、ほとんど残っていない。「高級住宅街だからなのか、あまり好きではなかったらしいわ。私は環境がよくて便利だから好きだけれど」とオークパークに40年以上、住むゲイル・オールさん(61)は言う。

 ≪大火が契機 「町全体が博物館」≫

 トウモロコシや大豆などの産地として知られるイリノイ州。そうした穀物を扱う世界最大級の商品先物取引所があるなど、シカゴはビジネスの街としての印象が強い。だが観光地としての魅力も大きい。高層ビルが立ち並ぶ摩天楼、市街のあちこちに点在するユニークなオブジェ、米観光サイト「トリップアドバイザー」で今年、世界の美術館・博物館の人気ランキング1位となったシカゴ美術館、ブルースやジャズなど音楽を楽しめるクラブも無数にある。

 「街全体が建築博物館」といわれるシカゴの系譜は、1871年のシカゴ大火に遡(さかのぼ)る。街の3分の1が廃虚となったが、農産物の集積地として栄えていただけに、復興は早かった。再開発と産業発展を背景にオフィスの高層化が進み、「シカゴ派建築」として20世紀の建築の中心となった。中心部を流れるシカゴ川を行く「建築リバークルーズ」では高層ビル、倉庫、跳ね橋など、50以上の建築物を眺められる。市内では、中心部のミレニアムパークにもユニークなオブジェが多数ある。街を歩けば、愛嬌(あいきょう)のあるピカソの彫像や、野獣のモニュメントに思いがけず出くわす楽しみがある。

 シカゴ美術館はメトロポリタン、ボストンと並ぶ米国三大美術館の一つで、印象派のコレクションで評価が高い。中でも美術館の最高傑作とされるスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」は、壁一面を使った大作。門外不出で、点描画から光を生み出す独特の筆遣いをじっくり眺めたい。

 また音楽ファンにとっては、シカゴといえばブルース。「黒人の魂の歌」としてのイメージが強いブルースは、19世紀後半に米国南部でアフリカ系アメリカ人の間で広まった労働歌が発展した音楽だ。20世紀に入った第二次大戦の前後、シカゴに黒人たちが移住し、バンド形式に進化して、ジャズやロックンロールにつながっていった。

 シカゴの代表的なクラブの一つ「キングストン・マインズ」で定期的に演奏しているマイク・ウィーラーさん(53)は「ブルースには泥臭いイメージがあるかもしれないが、トレンドの音楽もいれて進化している。僕はマイケル・ジャクソンも好きでよく聴いていた。若い人も、とにかく一度見て聴いて感じてほしい」と話していた。(文:藤沢志穂子/撮影:フリーカメラマン 緑川真実(まなみ)/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■シカゴのサイト(日本語版) www.choosechicago.jp/

 ■知られざるアメリカを紹介する公式ガイドサイト「ディスカバー・アメリカ」 www.discoveramerica.jp

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