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「時給2倍に」怒りの全米デモ/ファストフード従業員 400人超逮捕

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「時給2倍に」怒りの全米デモ/ファストフード従業員 400人超逮捕

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米ニューヨーク・マンハッタン区のタイムズ・スクエア  全米で4日、マクドナルドなどファストフード店で働く従業員らが賃上げを求めてストライキやデモを行い、約150都市で数千人が参加した。賃上げストは昨年来度々起きているが、今回は規模の大きさに加えて、座り込みを実施するなど手段が先鋭化。米メディアによると、400人以上の逮捕者が出た。背景には、働けど働けど現行の最低賃金に甘んじていては生活苦から脱せない現状や広がる一方の貧富の格差に対する怒りがある。

 従業員らは連邦最低賃金を現行の時給7ドル25セント(約760円)から、2倍以上の時給15ドル(約1580円)に引き上げるよう要求。ストやデモは約200万人が加入するサービス従業員国際労働組合(SEIU)が支援した。

 座り込みで交通妨害

 娯楽施設が集まるニューヨーク・マンハッタンの繁華街にはデモ参加者数百人が結集。タイムズスクエアにあるマクドナルド前の路上では約20人が座り込みを実施し、交通を妨害したとして騒乱行為の容疑で19人が逮捕された。フランス通信(AFP)などによると、ニューヨークではさらに15人が逮捕されたが、容疑や経緯は発表されていない。

 ロサンゼルスでは市南部にあるマクドナルドの店舗前に夜明け前からデモの参加者が集まり、ダウンタウンで行われた別のデモでは10人が逮捕された。その他、シカゴ、デトロイト、フィラデルフィア、マイアミ、デンバーなどで一斉に抗議行動が実施され、マクドナルドやバーガーキング、ウェンディーズ、ダンキンドーナツなどの従業員らが賃上げを訴えた。

 米国のファストフード店従業員の時給は平均約9ドル(約950円)で、年収は約1万9000ドル(約200万円)程度。マンハッタンでデモに参加したマーロン・ロドリゲスさん(18)は米CBSに「私の時給は8ドル。懸命に働いてもこの収入では生活できない」と不満をぶちまけた。

 上位3%が富独占

 一方、企業側は時給は市場の水準などに応じて決めているとして、引き上げには否定的だ。保守系シンクタンク、ヘリテージ財団は4日、「時給が15ドルになれば、企業は商品価格を38%値上げせねばならず、利益は77%減る」との試算を発表。マクドナルドも「各人が平和的抗議活動を行う権利は尊重するが、最低賃金の問題は企業の手中にはなく、この国全体の労働問題だ」とする声明を出した。

 低賃金に加えて従業員らの怒りを倍加させているのが、広がる一方の格差だ。米連邦準備制度理事会(FRB)が4日公表した家計調査によると、上位3%の層の所得が全体に占める比率は、2010年の27.7%から13年には30.5%に上昇。資産格差の拡大はさらに深刻で、保有資産上位3%の層の資産が全体に占める比率は、1989年の44.8%から2013年には54.4%に上昇し、一方で下位90%の資産の比率は、33.2%から24.7%に低下した。

 こうした現状は社会不穏の温床になりつつあり、最低賃金の10ドル10セント(約1060円)への引き上げを訴えてきたバラク・オバマ大統領(53)は1日、ミルウォーキーでの演説でファストフード従業員の運動に触れ、「米国民は賃上げに値する。この明瞭な事実は否定のしようがない」と支持する立場を明らかにした。

 強欲むき出しの行きすぎた資本主義がもたらした窮状といえるが、常に米国にならい、小泉政権以降、国際競争力が減退し、貧富の格差も徐々に広がっている日本にとって人ごとではない。(SANKEI EXPRESS

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