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仙台で国連防災会議開幕 190カ国・地域参加 首相、途上国に4900億円拠出表明
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国連防災世界会議の関連行事として開催された内閣府のフォーラム。被災県の知事らが教訓を報告した=2015年3月14日午後、宮城県仙台市(共同)
国際的な防災戦略を協議する第3回国連防災世界会議が14日、仙台市で開幕し、安倍晋三首相(60)は発展途上国に対するインフラ整備などに今後4年で40億ドル(約4900億円)を拠出するほか、防災や災害復興を担う各地域のリーダー4万人を育成するなど、国際社会に対する日本の支援策「仙台防災協力イニシアチブ(安倍イニシアチブ)」を発表した。東日本大震災や阪神淡路大震災など大規模自然災害を経験してきた「防災先進国」として議論を主導する考えだ。
世界会議には約190の国・地域が参加し、国内開催の国際会議としては過去最大級となる。
最終日の18日には、大規模な自然災害の被害減少を目指す新たな行動指針を採択する。死亡率や経済的損失の削減などの7項目の目標が盛り込まれる見通しとなっている。
開会式には天皇、皇后両陛下が臨席されたほか、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長(70)ら約20カ国の首脳級が参加した。
安倍首相は「災害の被災者の9割が集中する途上国にとって、防災は持続可能な開発や気候変動への適応という観点からも大きな課題である」と提起。その上で「防災を最重要課題に位置付ける『防災の主流化』が必要だ」と述べ、あらゆる開発政策や行動計画に防災の観点を導入すべきだと呼びかけた。
≪津波、原発…被災地の教訓、世界で共有≫
14日に仙台市で開幕した国連防災世界会議では、東日本大震災で被災した青森、岩手、福島各県の知事が、内閣府が開いたフォーラムで、大震災の教訓や地元で取り組む防災対策について講演した。また、大震災を経験した子供たちも、市内各地で開かれたシンポジウムなどで震災後の取り組みを積極的に発言した。
青森県の三村申吾(みむら・しんご)知事(58)は、津波などの被害について「(堤防のような)構造物による対策だけでは限界がある。何よりも逃げることが重要だと痛感した」と話し、県内各地で避難経路や避難場所の設定を急いだことを紹介した。
岩手県の達増拓也(たっそ・たくや)知事(50)は「震災で防災教育の重要性を再認識した」と強調、家庭や地域と連携して対策を進めることが必要だと訴えた。
東京電力福島第1原発事故で深刻な被害に遭った福島県の内堀雅雄知事(50)は「原子力に依存しない社会をつくろうとしている」と述べ、洋上風力発電など再生可能エネルギーの研究、開発に力を入れていることを説明した。
一方、大震災を経験した子供たちも、防災対策の必要性や未来の町づくりに対する強い思いを訴えた。
宮城、福島両県の子供たちが参加したフォーラムで、宮城県女川町立女川中の卒業生は、震災の教訓を伝え1000年後の命を守ろうと、津波が到達した町内6カ所に石碑を建てたり、防災の知識をまとめた「いのちの教科書」作りに取り組んだりしていると報告。「高台に避難できる町づくりや、地域の絆を深めることが大事」と強調した。
「夢だけは 壊せなかった 大震災」。高校1年生になった勝又愛梨さん(16)は、石碑に刻まれた同級生の句を読み上げ、「あの日、私たちは大切な命を守ってもらった。防災対策は私たちの希望です」と語った。
宮城県気仙沼市の観光復活に力を入れる高校3年生の山田克義君(18)は「ただの被災地では駄目。おしゃれに紹介していきたい」。4月からJR東日本に就職予定で「東北に行きたい人の足になりたい」と夢を膨らませた。
別の会場では、東京電力福島第1原発事故後、祖母が孤独死した経験を持つ福島県の高校1年生、遠藤太郎君(16)が「地域のつながりは防災にも役立つ」と強調した。
被災後の今の心境を語ったのは、岩手県の大槌中1年、佐々木陽音君(13)。津波で亡くなった父親や行方不明の祖父母宛てに「会えなくて4年。いろいろ迷惑かけたね」とのメッセージを数日前、交流サイトのフェイスブック上に載せた。父が熱心に取り組み、踊りも教えてくれた町の祭りを「ずっと残していきたい」と声を詰まらせた。(SANKEI EXPRESS)