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鮮明「ポンペイ・レッド」再び 遺跡群「秘儀荘」の修復完了

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鮮明「ポンペイ・レッド」再び 遺跡群「秘儀荘」の修復完了

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修復が完了したポンペイ遺跡の「秘儀荘」にあるフレスコ画の壁画=2015年3月20日、イタリア・ポンペイ(ロイター)  西暦79年(日本の弥生時代)、ナポリ近郊のベスビオ山の大噴火によって町全体が火山灰に埋もれ、繁栄の頂点で忽然(こつぜん)と消えてしまった古代ローマの都市、ポンペイ。劣化が激しいそのポンペイ遺跡では現在、イタリア政府が欧州連合(EU)などの支援を受けて修復作業を進めているが、遺跡群の目玉の一つである「秘儀荘」の修復が完了し、20日、一般公開が再開された。2000年近い時を経ているとはとても思えない、その壁画の色鮮やかな「ポンペイ・レッド」に訪れた人々は魅せられた。

 「最大のヤマ片付いた」

 「ここポンペイで私たちイタリア人は、歴史の新たな1ページをめくった。修復は誇るべきスピードで進んだ」

 20日、現地で行われた「秘儀荘」のリオープン式典で、イタリアのダリオ・フランチェスキーニ文化相(56)は、自慢げにこう語った。

 もともと、劣化が進んでいた上に豪雨などで痛みが激しくなったポンペイ遺跡については、遺跡を世界遺産に指定しているユネスコ(国連教育科学文化機関)がイタリア政府に修復を急ぐよう促し、遅れるようなら世界遺産から除外すると警告していた。財政難のイタリア政府は、EUから1億500万ユーロ(約140億円)の支援を受け、2013年5月から修復作業を開始。作業は16のプロジェクトに分け、これまでに秘儀荘修復を含めて3つのプロジェクトが終了し、今年中に残りの13プロジェクトを仕上げることになっている。

 「残りの修復作業も順調だ。イタリアはやることが遅いとか怠慢だとか批判もされたが、最大のヤマの秘儀荘が片付き、大きな自信になった」とフランチェスキーニ文化相は力を込めた。

 秘儀荘は、ポンペイ遺跡の城壁の外れにある邸宅で、「ディオニソスの儀式」と称されるストーリー性のある壁画で有名だ。18世紀以降、遺跡の発掘が進み、その壁画の存在が明らかになると、色鮮やかな保存状態の良さに人々は驚嘆した。今回の修復作業でも、建物や床、門構えの修繕は行われたが、絵画そのものはほとんど手が付けられていないという。

 多産祈願する儀式描く

 奇跡的な保存状態の秘密は、隙間なく町全体を埋め尽くした6メートル以上も積もった火山灰にあった。火山灰には乾燥剤として用いられるシリカゲルに似た成分が含まれ、湿気を吸収。このため、壁画や美術品の劣化が最小限に食い止められたと考えられている。

 「ディオニソスの儀式」は、多産を祈願する儀式とされる。かつて古代ローマ帝国の享楽的な歓楽街として栄えたとされるポンペイの遺跡からは、艶めかしい絵画が多数出土しているが、この儀式を描いた壁画にも、その種の絵画が含まれている。ディオニソスはギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神で、多産の御利益があると考えられていたようだ。

 儀式の作法を読み上げる裸の少年の姿や、入信者の男女がムチで打たれながら絡むシーンなどが流麗かつ力強い筆遣いで描かれている。

 例年200万人以上が訪れていたポンペイ遺跡。イタリア政府は修復を経て、大幅な観光客増を見込んでいる。(SANKEI EXPRESS

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