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【Q&A】国連防災世界会議 減災へ7つの目標、期限設定

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【Q&A】国連防災世界会議 減災へ7つの目標、期限設定

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国連防災世界会議で「仙台防災枠組」を採択する山谷(やまたに)えり子防災相(右)=2015年3月18日深夜、宮城県仙台市(共同)  東日本大震災から4年を迎えた仙台市で、第3回国連防災世界会議が14~18日の日程で開催された。関連イベントも含めると、日本や180を超える国・地域から延べ15万人以上が参加した。

 Q どんな人が参加したの?

 A 国連の潘基文事務総長ら国際機関の代表、サイクロンの被害を受けたばかりの南太平洋・バヌアツのロンズデール大統領をはじめ、タイやアフリカのジンバブエなどから首脳級、中国やインド、イラクなどからは閣僚級が参加した。日本からは天皇、皇后両陛下が開会式にご臨席、安倍晋三首相も参加した。

 Q どんな会議なの?

 A 災害に強い世界の実現のために、国際的な協力について話し合う会議だ。2015年以降の国際行動指針づくりをどうするのかが最大のテーマで、発展途上国をどう支援していくか、減災目標の設定も焦点となった。会議は1994年の横浜市、2005年の兵庫県に次いで3回目で、今回の会議は国内で開催された国際会議としては過去最大規模。震災の教訓、復興状況を参考にするという意味でも仙台市で開かれた意義は大きい。会議の参加者は期間中、被災地の視察もしていた。

 Q どんなことが決まったの?

 A 30年までに災害に伴う世界の死亡率を大幅に減らすことなどの目標を盛り込んだ新たな国際行動指針「仙台防災枠組」を採択した。国連が具体的な項目や期限を示して減災目標を掲げるのは初めてのことだ。「枠組」には7つの目標が掲げられていて、災害による経済損失を減らすことや、医療や教育施設など重要インフラの強靱(きょうじん)化、国際協力を大幅に増やすことも含まれている。

 Q 日本の役割は?

 A 議長国として会議を主導した。日本は「防災先進国」で、防災分野の2国間協力で拠出金額が全世界の約3分の2を占める。開会式で安倍首相が、発展途上国のインフラ整備などに今後4年で40億ドル(約4800億円)を出して防災の専門家4万人を育成すると表明したように、今後、国際協力の取り組みを加速させていく。

 Q 今後の課題は?

 A 会議は18日昼に閉幕する予定だったけれど、議論が紛糾して深夜までずれ込んだ。防災対策で一層の支援を求める途上国と、負担に難色を示す先進国の対立が最大の要因だ。地球温暖化が災害に影響を与えていることから、二酸化炭素(CO2)の大排出国が途上国より大きな責任を負うのかという点をめぐっても議論が難航した。

 11~12月にパリで気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が開かれるが、今回のような先進国と途上国との意見対立が激化しないか、早くも懸念の声が出ている。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪危機多様化 高まる国際連携の重要性≫

 新たな国際防災行動指針は、減災のグローバル目標を初めて掲げ、防災力強化に向け国際社会が連携して対処する姿勢を鮮明に打ち出した。

 「兵庫行動枠組」をまとめた2005年以降、温暖化の影響や都市化の進展により各地で災害は激しさを増している。国連によると、00~12年の災害による世界の死者は120万人に上る。矢面に立たされるのが、最貧国や島嶼(とうしょ)部の国々といった発展途上国だ。近年、途上国でも防災意識は高まっているとはいえ、一国での対応は難しい。

 経済のグローバル化に伴い、一つの国の災害はたちどころに他の国々に影響する。自然災害に限らず、感染病なども含め「多様化する危機」も叫ばれ、国際連携の重要性は高まっている。

 国連や日本政府が意欲を示していた数値目標こそ見送られたが、期限を定めた7つの目標を設定した意義は大きい。強制力はないものの、各国は世界全体の対応力底上げに向け、責任を負うことになるからだ。

 日本を含む先進国は、インフラ整備にとどまらず、人材育成や早期警報システムの普及も含め、実効性のある支援を加速させる必要がある。(SANKEI EXPRESS

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