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社会
新年度スタート 各社で入社式 「次代担う人材に」 74万人を鼓舞
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三菱鉛筆の入社式で自社の鉛筆を削る新入社員=2015年4月1日午前、東京都品川区(小野淳一撮影) 全国の企業や官公庁が1日、入社式や入庁式を開き、厳しい就職活動を乗り越えた若者たちが社会人の仲間入りをした。
東日本大震災の被災路線が昨年4月に全線再開した岩手県の三陸鉄道の入社式では、震災で自宅が全壊した金森太我さん(18)が「沿岸の復興に貢献したい」とあいさつした。
免震装置のゴムのデータ改竄(かいざん)問題で揺れる東洋ゴム工業の山本卓司社長は入社式で「人生の門出に会社がこのような状態で、大変申し訳ない気持ちだ」。大阪市の橋下徹市長は5月に実施される「大阪都構想」の住民投票に触れ「役所の姿が変わっても、住民のために働くことに変わりはない」と激励した。東京都の「入都式」では舛添(ますぞえ)要一知事が「2020年五輪は、歴史に残る大きな仕事。必ず成功させるために準備を進めよう」と述べた。
今春闘では大手企業を中心に、2年連続でベースアップが相次ぎ、就職内定率も改善傾向だ。ただ、中小企業や非正規の労働者にも待遇改善が広がるかは見通せず、景気の先行きには不透明感も漂う。
厚生労働省などの調査では、2月1日現在の大学生の就職内定率は86.7%で、前年同期比3.8ポイント増。4年連続で上昇したものの、この時点で5万7000人が内定を得られていないとみられる。
1月末現在の高校生の内定率は前年同期比2.1ポイント増の92.8%。各産業で求人が伸び、リーマン・ショック以前の水準に回復した。被災地では福島県の96.7%をはじめ、岩手96.3%、宮城94.3%と、いずれも前年同期を上回った。
≪「次代担う人材に」 74万人を鼓舞≫
新年度のスタートとなった1日、企業が一斉に入社式を開いた。厚生労働省によると今春の新入社員(大卒、高卒、専修学校卒など)は約74万6000人に上る。経営不振や不祥事からの再起、新たな経営トップの就任など、企業が抱える事情はさまざまだが、各社のトップは訓示で「次代を担う人材に育ってほしい」と鼓舞した。
民事再生手続き中のスカイマークの入社式には副操縦士訓練生ら11人の新入社員が出席した。経営破綻後に1人が辞退したうえ、前年実績(55人)からは大幅減となったが、井手隆司会長は「大変な時期にスカイマークを選んでくれて本当に感謝している」と謝辞。その上で「もう一度強い会社になろうとしている。皆さんのチャレンジは大切だ」と奮起を求めた。
同様に経営再建中のシャープは、高橋興三社長が「平成23、24年度の危機に比べるとまだまだ大丈夫。前を向くことで強い成長に戻る」と訴えた。新入社員に安心してもらうためか、今後の液晶事業の展開などにも言及し、事業説明会の様相を呈した。
本格的な採用を昨年再開した東京電力は、福島第1原発事故後2度目の入社式となった。広瀬直己社長は1年後に控える電力小売りの全面自由化を念頭に「自由化に打ち勝ち、福島事故の責任を果たしていく」と述べた。
新トップの動静にも注目が集まった。「この入社式が社長としての初仕事」と挨拶したのは4月1日付で就任したANAホールディングスの片野坂真哉(しんや)社長。先日墜落した独ジャーマンウイングス機など過去の航空機事故を踏まえ、「『安全こそがすべてである』と深く胸に刻み込んでほしい」と「安全」の2文字を繰り返した。
32人抜きという異例の人事で1日就任した三井物産の安永竜夫社長は「高揚する気持ちと緊張感を忘れず大事にしてほしい。私もそうします」と語りかけた。150人の新入社員と“社長デビュー”となった自身の心境とを重ね合わせた。
今秋の株式上場を目指す日本郵政グループは新入社員が6120人と民営化後で最多となり、全国13カ所で入社式を開催した。西室泰三社長は「郵政事業の新しい歴史を一緒につくっていこう」と呼びかけた。
過去最高益を見込むトヨタ自動車の入社式には、作業服姿の新入社員1504人が出席。豊田章男社長は「新しいトヨタの歴史を作ることが皆さんの使命。自分たちが一番というおごり、慢心がないか。感謝や謙虚な気持ちを忘れないでほしい」と強調した。
同じく営業最高益を更新する見通しの日立製作所の入社式でも、東原敏昭社長が「変化に対応し、成長し続けるマインドを持ってほしい」と注文した。
また昨年度、業界首位に躍り出たサントリーホールディングスの新浪剛史社長は「新しい考え方や価値観をブレンディング(混合)して新たな価値を創造しよう」と新人たちに“課題”を与えた。(SANKEI EXPRESS)