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経済
【Q&A】ネット情報削除 プライバシーと知る権利のバランス課題
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パソコンのモニターをかぶり顔を隠すパーフォーマンス。「プライバシー保護」と「知る権利」のバランスが問われている=2015年3月15日、ドイツ・ハノーバー(ロイター) インターネット検索大手のヤフーが、検索によって表示される個人情報を削除するよう求められた際、応じるかどうかを個別に判断する際の基準を公表しました。
Q 検索サイトとは
A 調べたい言葉を入力すると、その言葉と関係する情報が一覧で表示されるサイトのことです。
Q 基準の内容は
A 削除を求める人が未成年だったり、情報が性的画像や病歴、犯罪被害だったりした場合はプライバシー保護を優先して削除を検討します。一方、政治家や会社経営者など著名人だったり、情報が前科や逮捕歴など過去の違法行為だったりすれば公益性の高さを考慮し、「表現の自由」を踏まえて慎重に対応するとしています。このほか、社会的意義や関心の程度、情報が載ってからの時間経過も考慮します。
Q どうしてこんな対応が必要なのですか
A 一度インターネットに出た情報は広く拡散してしまうため、完全に消し去ることは極めて困難です。パソコンやスマートフォン、タブレット端末が普及して誰もが気軽にネットで情報をやり取りできるようになった分、個人を傷つける情報も簡単に検索できてしまう問題があり、ヤフーの姿勢はこうした現状への対策を示したものです。
Q 「忘れられる権利」という言葉を聞きます
A ネット上に残る個人情報のうち、時間がたってもはや表示に値しないようなものを消すよう求める権利のことで、欧州を中心にこの権利を守るべきだとの機運が高まっています。昨年5月に欧州連合(EU)の司法裁判所が、自宅を競売にかけられた昔の情報を検索大手グーグルの検索結果から削除するよう求めたスペイン人男性の訴えを認める判決を出し、忘れられる権利を認めたとして注目されました。
Q 日本での現状はどうなっていますか
A 昨年10月に東京地裁が出した決定をきっかけに議論が深まっています。「自分の名前を検索すると犯罪行為をしたかのように連想させる情報が出てくる」として日本人男性がグーグルに削除を求め、地裁が一部の訴えを認める仮処分決定を出しました。関係者は「忘れられる権利に似たものが日本でも認められた」と評価しています。
Q 忘れられる権利を広く認めるべきでは
A プライバシーを守るためには重要ですが、誰もが自由に情報を調べられる検索サイトは社会に浸透しており、むやみに検索結果の削除を認めれば知る権利の侵害になりかねないとの意見もあります。プライバシー保護と、表現の自由や知る権利とのバランスをどう取っていくかが今後の議論の課題といえます。
≪「忘れられる権利」 ヤフーが一定基準≫
ヤフーはいわゆる「忘れられる権利」を考慮して、インターネットで検索できる個人情報を一定の条件の下で削除するための基準を示した。精神的な苦痛を受けている人が少なくない現状では前進だが、こうした対応がネット検索を運営する他社にも広がるかは不透明だ。
インターネット検索最大手の米グーグルは「知る権利」や「表現の自由」を理由に、原則としてどのような情報も削除しないとの立場を取り続けている。この姿勢に変化を求めたのが、欧州連合(EU)の司法裁判所が昨年5月に下した判断だった。司法裁判所は、自宅を競売にかけられたとの情報をグーグルの検索結果から削除するよう求める男性の訴えを認めた。これを受けてグーグルは、欧州に限定して削除の要請を受け付ける画面を設置し、検索結果の一部を削除した。
ただ、削除対象は欧州各国のサイトに限定されており、対応を世界規模に拡大するよう要請しているEUに対して、グーグルは強く抵抗している。
日本でも内閣官房を中心に、裁判で情報の削除などを求めることができる権利を明文化する動きが出ている。検索各社に対応が広がるには、知る権利や表現の自由とのバランスに配慮しながら、法制化を進めることが必要となりそうだ。