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ロッキー山脈のくぼみジャクソンホール 厳冬生き抜く野生生物 間近に

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ロッキー山脈のくぼみジャクソンホール 厳冬生き抜く野生生物 間近に

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頭で雪を掻き分け草を探すバイソン=2015年1月13日、米ワイオミング州のグランドティトン国立公園(佐藤良一さん撮影)  動物を間近で見ることができる「ウインター・サファリ」が脚光を浴びつつある。

 アメリカ大陸を南北に貫くロッキー山脈の中、そこだけが鋭角にりりしくそびえ立つティトン連山。最高峰グランドティトン(4197メートル)を筆頭に、4000メートル級の山々が織りなす景色は、ロッキー山脈の中でも最も美しいといわれる。名作映画「シェーン」の舞台にもなった。裾野に広がる草原の風景を前にすると、思わずラストシーンで少年が叫ぶ名せりふ「シェーン! カムバック!」と叫びたくなる。

 ティトン連山の東側。地溝谷と呼ばれる地殻変動で生じたくぼみには、西部開拓時代を彷彿とさせる小さな町、ジャクソンホールが存在する。広大なグランドティトン国立公園、イエローストーン国立公園の玄関口でもある。

 冬季は深い雪に埋もれ、餌が乏しくなる山々での生活をあきらめたバイソンやエルク、ビッグホーンシープ(オオツノヒツジ)などの草食系の動物たちは、ここ地溝谷に集まり越冬する。しかし雪山同様に特有の厳しい自然環境が待っている。

 ティトン連山から振り下ろされる冷たい風が、くぼ地となるジャクソンホールに停滞し、辺り一帯は冷凍庫のような冷気と濃い霧に包まれる。霧はたいてい早朝から昼ぐらいまでに抜けるが、一日中冷気の霧に包まれる日もある。

 寒さだけなら山々と変わらない。しかし、食料となる草は冬でも豊富にあるため、冬をたくましく生き抜く動物たちの姿を間近で見ることができるのだ。

 ≪濃霧が生む偶然の楽しみ≫

 ロサンゼルスから空路で約2時間。機内の窓から雪をかぶった険しいティトン連山が見えてきた。飛行機はまるで遊覧飛行のように、連山の周囲を何度も旋回している。

 美しい景色を見せるためのサービスかと思いきや、機内アナウンスが流れた。視界不良のためジャクソンホール空港に着陸ができないとのこと。青空に山々がくっきりと見えているのになぜだろう。ふと眼下を見ると麓に厚い雲がたまっている。空港はこの雲の真下にあるようだ。

 30分ほど上空を旋回して連山を挟んで反対側の空港に着陸。ジャクソンホールへは陸路の移動となった。上空で厚い雲に見えたのは濃霧で、結局この日は晴れることはなかった。こんなハプニングも旅の醍醐(だいご)味として楽しめばいい。

 翌朝もまた冷たい霧の中。しかし国立公園を南北に貫く道路を車で移動中、突然霧が抜けはじめた。すると目の前に白い弓形の虹のようなものが現れた。これは「白虹(はっこう)」という霧が生む偶然の産物だ。

 快晴となった空一面にダイヤモンドダストがキラキラと舞っている。グランドティトンをバックに、頭で雪を掻き分けて餌を探す数頭のバイソンが見える。川沿いの湿地帯ではエルク3頭が移動中だ。雪原では、1匹のコヨーテが雪の中に隠れている小動物をめがけてダイブしていた。

 厳しい自然環境だからこそ、必死で生きる動物たちの崇高な姿を目の当たりにできる。美しくそびえ立つティトン連山に周囲を取り巻くたぐいまれな自然環境、そしてさまざまな野生動物たちが心を揺さぶる風景を魅せてくれる。(文:旅ライター 鈴木博美/撮影:カメラマン 佐藤良一/SANKEI EXPRESS

 ■すずき・ひろみ ライター。旅を通じて食や文化、風土を取材し、雑誌などに海外各地の旅の記事を寄稿。著書に電子書籍「OL一人旅レシピ」インド編、ベトナム・カンボジア編、エジプト編。「いつもの食材で作る世界の料理レシピ」など。ブログ「空想地球旅行」で旅のあれこれを発信中。

 ■さとう・りょういち 写真家。物語のある街を題材に旅行系の媒体で活躍中。ジャンルは問わず、旅先で出会った「色」を大切に撮影。著書に「パラオ海中ガイドブック」(阪急コミュニケーションズ)など。

 ■グランドティトン国立公園 ワイオミング州西部、イエローストーン国立公園の南に位置する国立公園。ティトン連山と山麓に広がるジェニー湖、ジャクソン湖などの絶景が広がりアメリカの55の国立公園の中でも最も美しい公園と称される。夏はハイキングや川下りなど雄大な自然を楽しむ観光客で大いににぎわう。詳しい情報はワイオミング政府観光局で検索。

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