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老舗時計 Apple迎撃に自信 スマートウオッチ市場続々参入
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支払い機能を搭載したスマートウオッチ「スウォッチタッチ_ゼロワン」の発売を発表するスイスの時計メーカー「スウォッチ」=2015年3月12日、スイス・コルジェモン(ロイター) 米アップルの腕時計型端末「アップルウオッチ」に、スイスをはじめとする時計の老舗メーカーが対抗心を燃やしている。世界の腕時計市場でシェア1位(18%)のスウォッチグループ(スイス)などが23日までにスマートウオッチの販売計画を相次いで発表。腕時計の製造で培ったデザイン性を武器に、アップル参入で大幅拡大が見込まれる市場の“分け前”を奪い取りに行く構えをみせている。
9日のアップルウオッチ発売計画の発表以降、いち早く対応策を打ち出したのがスウォッチグループだった。
3月12日付英BBC放送(電子版)などによると、スウォッチのニック・ハイエク最高経営責任者(CEO)はこの日の記者会見で、ホテルのドアに近づけるだけでキーとして使えたり、レジでかざすだけで買い物の決済ができるスマートウオッチ「スウォッチタッチ ゼロワン」を5月に発売すると発表した。
決済機能については、中国のクレジットカード決済機関「中国銀聯(ユニオンペイ)」のほか、スイスの銀行や米大手クレジットカード会社と提携交渉に入っている。夏頃にはスマートフォンと無線でつながり、ニュースやメールなどの送受信が可能なモデルも発売するという。
価格は一般的なスウォッチの約2倍の135スイスフラン(約1万6500円)。ハイエクCEOは「われわれは家電メーカーではない。手首に巻き付ける携帯電話を作るつもりはない。それはサムスン電子やソニーがやればいい」と述べ、時計としてのデザイン性での勝負に強い自信を示した。
スイスの時計大手タグ・ホイヤーも19日、米ネット検索大手グーグル、米半導体大手インテルと提携し、年内にグーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を積んだ初の高級スマートウオッチを発売すると発表。3月19日付米紙USA TODAY(電子版)などによると、ジャン-クロード・ビバーCEOは「われわれ3社の可能性は巨大だ」と語り、スマホ分野で圧倒的なシェアを誇るアンドロイドの強みを生かし、アップルに対抗可能と強調した。
米フォッシルもマーケティング部門の幹部、テレサ・パレルモ氏がBBCに「利用者が待ち望んだ技術を融合したことで大きなチャンスが生まれた」と語り、年内のスマートウオッチ発売を表明している。
欧米の老舗時計メーカーが相次いで参入を表明するのは、アップル参入の効果でスマートウオッチの市場規模が大きく拡大するとみているためだ。多くのアナリストはアップルウオッチの初年度の売り上げを1000万~3000万個と予測。これは昨年のスイスの腕時計輸出実績(約2860万個)に匹敵する規模で、新たな客層の獲得につながる効果も期待できる。
一方で、一連の素早い動きの背後には、1970年代の「クオーツ危機」での失敗を繰り返したくないという恐怖心も見え隠れしている。スウォッチの元技術者で大手コンサルタントのトップ、エルマー・モック氏はBBCに「スイスの腕時計メーカーは、70年代に日本製の電池式クオーツ時計を過小評価し、業界がほぼ崩壊したことを忘れるべきではない」と警告。その危機を安価な大衆向け製品の投入で救い、業界を復活させたスウォッチが今後も業界をリードすべきだと訴えた。
音楽配信サービスやスマホなどの新市場を相次ぎ制圧してきたアップルを相手に互角の戦いを演じられるのか。時計メーカー各社にとって今年はその力量が問われる1年になりそうだ。(SANKEI EXPRESS)