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女性の車運転「テロ」で裁き サウジ、解禁求める活動家2人を移送

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女性の車運転「テロ」で裁き サウジ、解禁求める活動家2人を移送

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女性活動家のルージャイ・ハスルールさんが動画投稿サイトで公開した、自動車を運転する様子。サウジアラビア当局に逮捕拘束され、「テロ法廷」で裁かれることになった(AP)  イスラム教の戒律を厳格に守り、男性優位の価値観から世界で唯一、女性が自動車を運転することを禁じているサウジアラビアで、解禁を求めて活動していた2人の女性が、「テロリスト」として裁判にかけられることになった。2人は自動車を運転し当局に逮捕・拘束されていたが、26日までにテロリズムを専門に扱う特別法廷に移送されたと、欧米主要メディアが報じた。運転行為ではなく、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じた活動が問題視されたという。女性の権利に加えて、ネットを通じた言論の自由も踏みにじるサウジへの国際的な批判が高まっている。

 ツイッター投稿を問題視

 英BBC放送やAP通信などによると、2人は人権活動家のルージャイ・ハスルールさん(25)と、活動家でジャーナリストのメイサ・アルアムーディさん(33)。

 ハスルールさんは先月30日、車を運転してアラブ首長国連邦(UAE)からサウジ東部に入ろうとしたところを国境警備隊に逮捕され、パスポートを押収された。アルアムーディさんは12月1日に、拘束されたハスルールさんに食料や毛布を届けようとして、同じ国境地帯で逮捕された。2人は別々の刑務所に収監されていた。

 2人と親しい複数の人権活動家が匿名でメディアに語ったところによると、東部アル・アフサで開かれた公判で、特別法廷への移送が決まったという。その理由について、「ツイッターへの投稿が問題視されているようだ」と明かした。

 2人は女性の自動車運転を認めさせる運動の中心人物で、アルアムーディさんは、この問題を議論するユーチューブ(動画サイト)の番組を主催している。サウジ当局は、2人の絶大な影響力を恐れたようだ。UAEの日刊紙ガルフ・ニュースによると、ツイッターのフォロワー(読者)はハスルールさんが22万8000人、アルアムーディさんも13万1000人に上る。

 ハスルールさんは国境警備隊に止められた後、逮捕されるまでの24時間、その状況をユーモアを交えながら詳細にツイッターで中継。大きな反響を呼び、女性の運転禁止に対する世界の関心を改めて高めた。

 聖職者の宣言で禁止に

 イスラム教の戒律を厳格に守るサウジでは女性の運転や一人歩きが禁じられるなど、その権利が著しく抑圧されている。1957年からの運転禁止は法律によるものではなく、保守派のイスラム教聖職者が禁止を宣言したことに基づいている。

 国内外で解禁を求める運動が行われているが、昨年10月には一斉運転を行った20人以上が治安当局に摘発された。また今年10月には十数人の女性たちが運転する写真をネットに投稿する運動を行ったのに対し、サウジ内務省は「社会的結束を弱める者に対しては断固たる措置を取る」と表明していた。

 米人権団体「恥もたらす」

 サウジの国政助言機関の諮問評議会は、今年11月に政府に対し運転解禁を提案した。もっとも評議会に立法権はなく宗教界の抵抗が予想されるうえ、運転は時間限定で地味な服装や化粧なしの素顔であることを求めるなど、抑制だらけだ。

 サウジ当局は2人の逮捕を報じた国内人権団体のウェブサイトを閉鎖するなど、ネット弾圧も強めている。

 米人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチは2人の解放と運転解禁を求める声明を出し、サウジをこう激しく非難した。

 「女性への下劣な制限が国に恥をもたらすだろう」(SANKEI EXPRESS

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