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まるでSF作品? 独警察「犯罪予知」ソフト導入検討 人権侵害招く恐れも
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犯罪者制圧の訓練を公開したベルリン警察の特殊部隊。犯罪予測ソフトが導入されれば、犯罪捜査も劇的に変化する=2014年9月7日、ドイツ・首都ベルリン(ロイター) ドイツのベルリン警察が、これから犯罪が起こる可能性が高い時間や場所を予測するコンピューターソフトの導入を検討していると、複数の欧州メディアが3日までに伝えた。
ソフトは超能力者の予知によって殺人事件がゼロとなった未来を描いた米ヒットSF映画「マイノリティ・リポート」(2002年)に着想を得て開発され、現在、実証実験が行われている。米国や英国でも導入の動きがあり、犯罪件数を劇的に減らすことができると期待されている。
だが、映画の主人公が陰謀によって殺人を犯すと予知され、追われる身となったように、人権侵害を招く恐れがあり、市民団体などは強い懸念を示している。
英紙デーリー・メールやフランス通信(AFP)などによると、ソフトを開発したのは民間の「パターンに基づく予測技術研究所」で、「Precobs(プリコブス)」と名付けられた。
「事前犯罪予防監視システム」の頭文字をとったものだが、「マイノリティ・リポート」に登場する3人の予知能力者の名称である「プリコグ(precog)」を意図的に取り入れた。
過去の空き巣や強盗といった犯罪の発生場所と時間の膨大な情報をデータベース化。プリコブスの分析によって類似犯罪がいつ、どこで、どのように発生するかの犯罪パターンを示唆するという。
現在、南部バイエルン州で実験が行われており、ベルリン警察の広報担当者はデーリー・メール紙に「採用するかどうかは今回の実験の結果次第だ」と語り、導入検討を認めた。すでに州内のミュンヘンとニュルンベルクの2都市で強盗に関する初期テストが行われており、州のヒム・ヘアマン内相は先月、「前途有望」と評価し導入に前向きな姿勢を示している。
同じような犯罪予測ソフトの実験は英国でも行われていた。英BBC放送が10月に伝えたところによると、ロンドン警視庁はアイルランド企業が開発したソフトを使い、犯罪者のネットへの投稿などの情報を4年間にわたり収集し、将来起こりうる犯罪の予知に役立てる実験を行っていた。
さらに米国のペンシルベニア州とメリーランド州では2010年から、仮出所した受刑者のなかから殺人を行う可能性が高い人物をソフトで予測し、実際に監視しているという。米ABCテレビによると、ソフト開発者は「殺人を含む6万件の犯罪をデータ化し、100人の受刑者から殺人を起こすであろう8人を識別した」と語っている。
犯罪予測ソフトの発想の原点である映画「マイノリティ・リポート」では、トム・クルーズさん(52)が演じる主人公が将来殺人を犯すと予知され、逮捕された。ソフトが恣意的に使われれば、こうした人権侵害が現実となりかねない。
ドイツでは、人権活動家らが12月2日付の日刊紙ベルリナー・ツァイトゥングで「現在の匿名データの代わりに将来、個人情報が用いられる恐れがある」との懸念を表明。
英プライバシー保護団体ビッグ・ブラザー・ウオッチの責任者ダニエル・ネスビット氏もBBCに「特定グループが不当に調査対象となる危険性がある」と語っている。(SANKEI EXPRESS)