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【取材最前線】新たな家族像の一つに

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【取材最前線】新たな家族像の一つに

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 先日、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した是枝裕和監督の「そして父になる」が地上波で放映された。ごらんになった方も多いと思うが、病院で子供の取り違えにあった2組の親子を通じ、家族の絆を描いた作品だ。

 一人息子が他人の子と判明したのは、6歳まで育てた後のこと。主人公の父はいったん、本来の子供を連れ戻して暮らし始めるが、6年間をともにした「わが子」への気持ちに気づく。親子をつなぐのは血縁か、過ごした時間か。映画が多くの人の心を打ち、「自分だったら」と考えさせられたのは、ほとんどの親子が両者をてんびんにかける必要がなかったからだろう。

 映画は特殊な状況だが、現実にも、血縁関係のない親子が紡いでいる家族の絆がある。特別養子縁組という制度で子供を迎え入れた夫婦の家庭だ。

 特別養子縁組とは、子供を授からなかった夫婦が家庭裁判所の審判を経て、親と一緒に生活できなくなった乳幼児と法律上の親子関係を結ぶもの。2013年度に成立した特別養子縁組は474件。ここ10年はおおむね300~400件台で推移している。

 今年1、2月に特別養子縁組をテーマとした企画で、約10年前に出生後3カ月の男児を迎え入れた夫婦を取材した。夫婦は男児の幼児期から「かーたんも生んだママも、お母さんなんだよ。◯◯(男児の名)が大好き」と伝え続けることで親子関係をはぐくんだ。男児は、あっけらかんと養子であることを受け止め成長。今月、小学5年生になった。

 もちろん、家族になるためにはさまざまなハードルがある。煩雑な手続きに始まり、育ての親は子供の「来し方」すべてを受け入れなければならないし、告知が遅れれば親子関係に亀裂が生じることもある。子供も授業で名前の由来などを発表する機会に、生みの母がいないことを再認識するかもしれない。ただ、取材した3人はいずれのハードルも乗り越え、強い家族の絆を感じさせた。

 「望まぬ妊娠」などを背景に、13年2月時点で児童養護施設に約3万人、乳児院に約3000人が暮らす。子供の成育環境を考慮し、厚生労働省は里親を中心に「施設偏重」の見直しを進めているが、特別養子縁組という制度が新たな家族像の一つとして広がることを期待したい。

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