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【Q&A】AIIB インフラ特化 中国、影響力拡大狙う

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【Q&A】AIIB インフラ特化 中国、影響力拡大狙う

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アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立式典に出席した各国代表と握手する中国の習近平国家主席(右端)。右奥は楼継偉財政相=2014年10月、中国・首都北京市西城区の人民大会堂(共同)  中国が「アジアインフラ投資銀行」の設立を目指しています。

 Q どんな銀行なのですか

 A 中国の習近平国家主席が2013年10月に設立を提唱した国際金融機関です。英語名は「Asian Infrastructure Investment Bank」で、略称は「AIIB」です。幅広い国に出資を募り、鉄道や道路、発電所といったインフラの整備が必要な途上国や新興国にお金を貸し出します。

 Q どれだけのお金を集めるのですか

 A 資本金は当初計約500億ドル(約6兆円)で、中国が最大の出資国となって年内に設立する計画です。北京に本部を置き、初代総裁も中国が出すとみられます。

 Q どういった国が参加するのですか

 A 東南アジア諸国連合(ASEAN)の全10カ国やインド、中東諸国、中央アジア諸国に加え、英国やドイツ、フランス、イタリアなどの欧州各国も手を挙げています。創設メンバーとなるための申請期限とされた今年3月末までに参加を表明した国は40カ国を超え、最終的には50カ国・地域を超える見通しです。

 Q 中国の狙いは

 A 途上国などはインフラ整備の資金調達に悩んでいて、AIIBが資金を提供すればアジアでの中国の影響力が強まることになります。日本と米国が主導する「アジア開発銀行(ADB)」も途上国のインフラ整備などにお金を供給していますが、世界第2位の経済大国となった中国には、ADBで自らの発言権が不当に抑えられているという不満もあり、新しい国際金融機関をつくることにしたようです。

 Q 役割が重複する新しい国際金融機関は不要なのでは

 A ADBや世界銀行は途上国の貧困をなくすことに力を入れていますが、AIIBはインフラ整備に的を絞ったという違いがあります。ADBは10~20年にアジアで計約8兆ドルのインフラ投資が必要になると試算していますが、ADBの14年の融資額は約131億ドルで、旺盛な需要に応えきれていません。

 Q 日本は参加しないのですか

 A 日本政府は、組織運営が不透明であることなどを理由に参加に慎重な姿勢を崩していません。環境破壊につながる事業に融資する心配もあります。ADBを主導する日本や米国には、AIIBが設立されることで自らの影響力が低下するといった懸念もあります。

 Q 国内に参加を求める意見はありますか

 A 経団連は、政府内の議論を見守る姿勢を示しながらも、AIIBに参加しないことで企業のインフラ輸出に悪影響が出ないような配慮が必要だと訴えています。企業などから参加を求める声が強まれば、政府内の議論にも影響を与えそうです。

 ≪日本、動向見極め「慎重に検討」≫

 AIIBへの参加表明を見送った日本は、創設メンバー国が設立協定の合意を目指す6月末を再判断のタイミングと見据え、関係国の動向も見極めながら慎重に検討していく考えだ。ただ、英国を参加に引き寄せた中国のしたたかな戦略に後手に回ったのは否めず、今後も難しい対応を迫られそうだ。

 政府はAIIBに関し、統治(ガバナンス)の確立や融資基準などが不透明なため「慎重な検討が必要」(首相)との立場を崩していない。一方で、英国に加えドイツやフランスなどの参加表明が相次いだことは「想定外」(政府筋)で、首相は事前に情報を入手できなかった官僚に対し「不信感を抱いている」(周辺)という。

 インフラ輸出を成長戦略の柱に掲げる政府にとり、AIIB設立により中国が成長著しいアジアの新興国などでのインフラ整備で主導権を握れば、日本企業への影響も与えかねない。

 首相は引き続き中国側に説明責任や国際金融ルールの順守を果たすよう求めると同時に、ADBとの協調融資も模索する。6月上旬に北京で開催予定の日中財政当局による対話でも「真意をただす」(財務省筋)方針だ。(SANKEI EXPRESS

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