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政治
APEC閉幕 中国野望、自国主導で「経済覇権」
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アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳宣言骨子=2014年11月11日、中国・首都北京市 ≪FTAAP早期実現目指す≫
中国・北京で開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は11日、目標に掲げるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現に向けた「工程表」を承認し、「可能な限り早期」の実現を目指すとした首脳宣言を採択して閉幕した。FTAAPの実現に向けた課題について、共同で戦略的研究を始め、2016年末までに結果を報告するよう実務者に指示することでも一致した。
議長国・中国の習近平国家主席(61)は「アジア太平洋の新たな将来図を描こう」と訴え、「FTAAPを進め、できるだけ早く、高度に開放的な一体化の取り組みを実現すべきだ」と強調した。
また、安倍晋三首相(60)は「FTAAPの土台と位置づけられた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などを積極的に推進している」と述べ、構想の実現に貢献する意向を示した。
宣言では、新たな保護貿易主義的な政策導入を抑える期限を18年末へと、2年間延長することを確認した。世界貿易機関(WTO)交渉での貿易円滑化措置の実現が難航していることを懸念し、APECが「創造的な指導力」を発揮すべきだとした。
一連の会議は、アジアの貿易秩序をめぐる日米と中国の主導権争いを激化させることにもなった。同時にTPP首脳会合が開かれるなか、議長国の中国は、APECに参加する21カ国・地域にまたがるFTAAPの具体化に向けた戦略を打ち出した。
交渉開始につながる事前研究の実施にこだわるなど、日米主導のTPPに対抗しようとしたのは明らかだ。
一方で日米は、TPP交渉が停滞する中、中国の動きに神経をとがらせた。中国が提案したFTAAP実現目標時期の明記は、TPPの合意をFTAAPの前提と位置づける日米が拙速な具体化に難色を示し、首脳宣言には盛り込まれなかった。
TPP交渉は越年が確実となり、TPPに対抗心を示す中国も、本来は貿易自由化に前向きとはいえない。アジア太平洋地域の自由貿易圏構築への道筋は険しいのが実情だ。(北京 本田誠/SANKEI EXPRESS)
≪中国野望 自国主導で「経済覇権」≫
中国は北京でのAPECを通じ、自国主導で新たな枠組みを作り上げる「経済覇権」への野望をうかがわせた。北京に本部を置くアジアインフラ投資銀行(AIIB)へのインドネシア参加や、韓国との自由貿易協定(FTA)交渉妥結、人民元の国際化につながる香港との越境株式取引の発表がそうだ。金融、貿易、通貨の面から、日米欧など国際社会の既存の枠組みへ対抗軸を打ち出した形だ。
中国は「日米欧などの国際経済ルールに従い続けるよりも、中国主導型の枠組みに周辺を従わせる戦略を練ってきた」(中国の経済学者)という。APEC参加21カ国・地域は「従わせたい周辺」に重なり、主催国の立場で主導権を握る演出ができると考えた。
日本が最大出資国でマニラに本部を置くアジア開発銀行(ADB)に対抗する組織のAIIBは、中国の提唱で21カ国が先月、創設計画の基本合意書に署名した。
TPPに不参加の立場をとるインドネシアのジョコ・ウィドド大統領(53)は、習近平国家主席との会談で「AIIBに早期参加したい」と9日に表明。東南アジア諸国連合(ASEAN)の全10カ国が加わることになり中国は主導権を強めた。
韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(62)は10日の習氏との会談で、FTA交渉で実質的に妥結。来年中の中韓FTA発効を目指すことにした。中国には、日米などが交渉を進めるTPPより先行し、FTAによる“貿易勢力圏”を広げておく狙いがある。中国は豪州とのFTAにも道筋をつけた。
香港の梁振英行政長官(60)は9日、習氏との会談で、民主派デモの影響で遅れていた上海と香港の証券市場間の越境株式取引を17日に開始することで合意。金融当局が10日発表した。中国本土の投資家が香港の上場株式を売買すると、人民元建て資本が国際市場で大量に流通することになる。米ドルに次ぐ基軸通貨を視野に入れた中国の通貨国際化戦略では、大きな進展だ。
APECの場を借りた中国の戦術だが、「にわか作りの枠組みに周辺国・地域がどこまで真剣に従属するのか分からない」(日中関係筋)との見方もある。(北京 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)