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中台関係に「風邪ひかせた」香港デモ
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中国・香港の行政長官官邸
香港で続く「真の普通選挙」を求める大規模デモが、中台関係にも影響を及ぼしている。中国の習近平国家主席(61)が、香港で施行する「一国二制度」を台湾統一に適用すると言及したことで、台湾当局や与野党が反発、デモ支持が広まった。これを受けて馬英九総統(64)がデモへの支持を公言すると、今度は中国側が批判。初の首脳会談の計画も頓挫し、馬総統が「(分断後)65年来で最も安定し平和的」と評した中台関係に、とげとげしい雰囲気が漂っている。
習氏は9月26日、台湾の野党「新党」の党首ら統一派訪中団と北京の人民大会堂で会談した。習氏は台湾独立派を強く牽制(けんせい)する一方で、「平和統一と一国二制度は台湾問題を解決する基本方針であり、統一を実現する最良の方式だ」と語った。一国二制度による台湾統一は中国政府の従来の方針だが、習氏が台湾人を前に言及するのは就任後、初めてとされる。
香港の大学ではこれに先立つ22日、1万3000人規模の授業ボイコットが始まり、台湾でも報道されていた。そのタイミングでの習氏の発言に、台湾の総統府は、直ちに「香港と台湾は全く違う。中華民国(台湾)は主権国家であり、一国二制度は受け入れられない」とする報道官談話を発表。野党、民主進歩党の報道官も「香港市民の境遇が、すでに一国二制度は空手形だと証明している」と反発した。
28日に始まった香港の金融街「セントラル(中環)」周辺の占拠が、夕方になり強制排除に発展すると、馬氏は29日、経済団体の会合で、敢えて香港情勢に言及。「香港市民の普通選挙への要求」に支持を表明するとともに、中国政府に「香港の民衆の声を聞き、平和的で慎重な態度で処理する」よう呼びかけ、間接的に強制排除を批判した。民進党も30日、海外メディア向け記者会見を開き、デモへの支持を表明した。
こうした台湾の「朝野の総意」(国民党立法委員)ともいえるデモへの支持表明は、習氏の一国二制度発言に触発された側面が否定できない。習氏は30日に開いた国慶節(建国記念日)前の祝賀会の演説で香港については「一国二制度を貫徹する」と強調したものの、台湾に関するくだりで再び言及することはなかった。
中国側は、台湾独立派への警戒感が強い。台湾では3、4月、中国とのサービス貿易協定に反対する学生らが立法院(国会に相当)を24日間にわたり占拠し、学生らを支援する反中デモも行われた。その際、中国メディアには、背後に民進党を中心とする“独立派”の策動があるとの論評が出た。実際には、学生らと民進党との主張には違いがあり、民進党が批判の対象になることもあった。
今回の香港のデモについても、香港の中国系通信社、中国評論通信社が10月6日付社説で、「一部の台湾人が、台湾独立派と香港独立派を合流させようとしている」と主張。香港当局も6月末、台湾の学生運動幹部の香港入りを阻止しており、台湾との連携を警戒している。
一方、台湾の馬総統は「独立せず」を宣言しているものの、就任以来、民主主義や人権問題への関心の高さをアピールしてきた経緯がある。8日には切望していた11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)への出席を断念し、初の中台首脳会談の実現見送りが確定した。それもあってか、10日の「双十節」の演説では、香港のデモに改めて支持を表明するとともに、中国に「智恵と度量」を示してデモ隊に譲歩するよう求めた。
これに対し、中国国務院(政府)台湾事務弁公室の報道官は10日と15日の2度にわたり、「香港の政治改革について、台湾側は四の五の言うべきではない」と不快感を表明。台湾の反中デモや対中主管官庁幹部のスパイ疑惑などを受けても表面上、良好な関係を維持してきた中台の当局間関係は、元台湾当局高官が「風邪をひいた」と認めるまで冷却化する事態になった。
台湾では11月末に統一地方選を控え、当面は対中政策で大きな譲歩をする政治環境にない。中国評論通信社は13日付の社説で、2016年5月の馬総統の退任までを見通し、「両岸(中台)関係はさらに悪化する可能性もある」と警告した。(台北支局 田中靖人(SANKEI EXPRESS)