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経済
米、共同出資事業を提案 「影響力」模索 中国主導のAIIB
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経済フォーラムで演説する中国の楼継偉財政相=2015年3月22日、中国・首都北京市(ロイター) 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は22日、中国主導で創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐり、オバマ米政権が中国側に対して、米国主導の世界銀行やアジア開発銀行(ADB)との共同出資事業を提案したと報じた。AIIBが中国の影響力拡大の手段として運用されることを防ぐ狙いがあるとみられる。
オバマ政権はこれまで、AIIBの融資事業について、環境や労働条件の基準が既存の国際金融機関に比べて低くなる可能性などに懸念を表明してきた。シーツ財務次官(国際問題担当)はウォール紙に対して、「世銀やADBとの共同出資事業は、歴史的に有効性が証明された高い基準を確保することに役立つ」と話した。
AIIBは中国が拒否権を握り、恣意(しい)的に運用される懸念がある。ウォール紙はAIIBの融資が中国企業の海外進出を後押しする補助金として機能することや、中国海軍の艦船を受け入れるための軍港建設に使われることなどへの懸念を指摘した。また、AIIBの融資基準が甘くなって貸し倒れが起きた場合に、他の金融機関への融資返済も滞る可能性も問題視されている。
中国側はウォール紙に対し、世銀などとの共同出資事業を検討する可能性があることを示唆し、AIIBがオープンな国際金融機関となることをアピールしている。中国はこれまでも米国や日本などに対して、AIIBへの参加を呼びかけていた。
一方、オバマ政権はAIIBが抱える問題点を踏まえ、各先進国に参加を思いとどまるよう呼びかけていたとされる。しかし、今月に入って英仏独伊が相次いで参加を表明。韓国や豪州でも参加の是非が検討されている。オバマ政権にとっては同盟国に相次いで背中を向けられたかたちで、共同事業によってAIIB外部から影響力を及ぼす方法を模索しているもようだ。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS)
≪日本は慎重姿勢 「条件満たされず」≫
米紙が報じたAIIBに対する米国の共同出資提案は、AIIBの融資に厳しい基準を求めたものともいえ、中国側の運営方針に懸念を示す日本の立場と歩調を合わせた格好だ。
「現在のところは、条件が満たされていないのではないかと考えている」。宮下一郎財務副大臣は23日の会見で、AIIBの参加に慎重な日本政府の姿勢を重ねて強調した。
宮下副大臣の挙げた「条件」とは、AIIBが(1)加盟国を代表する理事会が個別案件の審査、承認を行うこと(2)債務の持続可能性や環境、社会に対する影響への配慮-の2点が確保されること。政府はアジア地域のインフラ整備で、AIIBが野放図な融資を繰り返せば、日本が歴代総裁を出すアジア開発銀行(ADB)の融資が焦げ付くなどの影響が出かねないと懸念している。
実際、AIIBの融資判断については、中国が独自基準を採用する可能性が高い。22日に北京で開かれた経済フォーラムでも、投資案件には環境保護への配慮が必要とするADBの中尾武彦総裁の指摘に、中国の楼継偉財政相が、「官僚主義で、最良とはいえない」と反論していた。
一方、アジアのインフラ需要は既存の国際機関だけでまかない切れないのも事実。欧州各国の相次ぐ参加表明は成長市場を見据えての動きともいえ、今回の米国の共同出資提案で、日米はAIIBに対する関与の選択肢を残した。(佐久間修志/SANKEI EXPRESS)