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【Q&A】再生エネ見直し 発電抑制で採算悪化 参入断念事業者も

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【Q&A】再生エネ見直し 発電抑制で採算悪化 参入断念事業者も

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約29万枚の太陽光パネルが並ぶ日本最大級の鹿児島七ツ島メガソーラー発電所=2014年11月26日、鹿児島県鹿児島市(大竹直樹撮影)  政府が再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を見直します。

 Q どのような制度ですか

 A 太陽光などで発電された電気の全量を一定の期間にわたって買い取るよう、大手電力会社に義務付けました。買い取り費用は電気料金に上乗せします。2012年7月に導入され、普及に一定の効果がありました。

 Q どう見直すのですか

 A 電力会社が、新規に参入する事業者に、太陽光や風力の発電量の抑制を求めやすくするのが柱です。送電網の受け入れ可能量を超える分は、電力会社が補償金を払わず、いつでも抑制を求められるようにしました。

 Q 事業者にはどのような影響がありますか

 A 発電の抑制を長期間強いられる可能性が高まり、採算の悪化は避けられません。さらに政府は15年度から太陽光の買い取り価格を下げる方針です。参入を断念する事業者もありそうです。

 Q 今の制度の利用は進みましたか

 A 太陽光に事業者の参入が殺到しました。買い取り価格が高く、設備の設置が比較的簡単だからです。開発に時間がかかる地熱や風力は遅れています。10月末時点で、政府が認定した設備容量の約96%が太陽光です。

 Q 太陽光に偏ると何が問題なのですか

 A 天候に左右されるなど不安定です。九州電力など電力5社は、受け入れが続くと需給の釣り合いが乱れて停電が起きる恐れがあるとして、買い取りの手続きを中断しました。参入を準備してきた事業者や自治体の間に混乱が広がりました。

 Q 太陽光を受け入れる余裕はないのですか

 A 経済産業省と電力会社の調査では、東北電力や九州電力、北海道電力などで、想定される容量が送電網の受け入れ可能量を大幅に上回り、非常に厳しい状況です。

 Q なぜこのような状況になったのですか

 A 政府の見通しが甘すぎました。専門家は、制度が導入された直後に、買い取り価格が高く事業者を優遇しすぎていると指摘していました。

 Q 家庭の太陽光発電も対象ですか

 A はい。ただ、事業者に対して先に発電抑制を求める仕組みとしました。政府は家庭への影響を抑える考えです。

 Q 課題は何ですか

 A 送電網の増強には数兆円が必要との試算もあり、費用負担をどうするのかが議論になりそうです。再生エネルギーが増えると膨らむ国民負担の抑制も求められます。

 ≪「無制限に認定」見通し甘く≫

 経済産業省が再生エネの固定価格買い取り制度の抜本的な見直しを制度の導入からわずか2年で迫られることになったのは、太陽光発電への事業者参入の見通しに甘さがあったことが最大の原因だ。

 経産省は再生エネの普及を優先するため、比較的簡単に事業が始められる太陽光の買い取り価格を高く設定した。事業計画の審査は簡単な書類の確認だけで、ほぼ無制限に認定を出した。その結果、太陽光発電に「想定以上の早さ」(経産省幹部)で事業者が参入。太陽光の認定量は大手電力の受け入れ可能量を大きく超えた。

 このままでは多くの事業者が買い取り契約を結べず、金融機関から融資を受けたまま計画が頓挫する可能性がある。地域振興の柱として太陽光など再生エネの導入を決めた自治体の混乱も避けられない。

 経産省はこうした問題を解消するため、太陽光の発電抑制に加え、受け入れ側の容量拡大につながる送電網の増強も検討している。ただ、増強に必要とされる数兆円規模の資金を誰が負担するのか。問題の解決は簡単ではない。(SANKEI EXPRESS

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