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経済
再生エネ買い取り見直し 住宅用も出力抑制 2年で崩壊 菅政権「負の置き土産」
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太陽光発電を行うソーラーパネルを設置する作業員たち。「全量買い取り」を大前提とした再生可能エネルギー買い取り制度が導入後わずか2年半で崩壊し、参入した発電事業者の事業計画にも大きな影響が予想される=2014年10月16日、神奈川県川崎市(ロイター) 経済産業省は18日、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の見直しを発表した。電力会社が太陽光などの発電事業者に対し、日数の制限なく発電した電気の出力抑制を求められる指定電気事業者制度を適用。事業用が対象だった出力抑制を住宅用にも拡大する。きめ細かく送電の調節ができる遠隔操作装置の導入を義務付ける。
経産省は22日をめどに九州電力など6社を指定電気事業者に指定する。これを受けて各社は、年内にも水力、地熱発電など一部の再生エネ買い取りを再開する。
今回見直した制度改正は来月中旬に実施。太陽光や風力など、すべての種類の再生エネの買い取り再開に向けて、電力会社が今後、調整を急ぐ。
現行制度では、無償で出力抑制を要請できる期間を年間30日としているが、それでも新規の電力受け入れが困難な場合、経産相の指定を受けた指定電気事業者であれば無制限に出力抑制を実施できる。
事業用の太陽光、風力発電が対象の出力抑制を500キロワット未満にも適用。10キロワット未満が大半となる住宅用も対象となるが、送電中断はまず事業者に求め、それでも買い取り継続が難しい場合に住宅用でも実施することで、住宅からの送電中断は最小限に抑える。対象拡大に伴い、発電設備につけて出力を遠隔操作する通信機器の導入を進める。きめ細かく送電を調整し、事業者のリスクとなる出力抑制の時間を可能な限り少なくする。
≪2年で崩壊 菅政権「負の置き土産」≫
再生エネルギー活用の起爆剤とするため、電力会社による「全量買い取り」を大前提として始まった再生可能エネルギー買い取り制度は、わずか2年でその根幹がもろくも崩れた。
失敗のもとをたぐれば、制度の詳細が作られた2011年当時の政治状況に行き着く。東日本大震災後の数々の失政で与野党から退陣を迫られていた当時の菅直人首相(68)は、再生可能エネルギー買い取り制度の根拠となる特別措置法の成立を自らの首相辞任の3条件の一つに挙げた。「菅の顔をみたくなければ、早く法案を通した方がいい」とまでうそぶき、自民、公明と修正法案合意に持ち込んだ。
制度は12年7月に導入されたが、民主党政権の“あしき置き土産”として、12年12月に発足した自民党政権に引き継がれた。
この前後の制度づくりには、今も数々の矛盾が指摘されている。太陽光の買い取り価格は国際的にみてもかなり高額に設定されており、しかも、事業者と電力会社の契約手続きのタイミングによって価格に差がある。早く国に事業者として認定されたほうが得なため、事業認定の“枠取り”のような行為も横行。認可を受けながら、発電設備を建設しない業者が続出し、制度の根幹を揺るがせた。
経産省が18日決めた制度見直しでは、こうした矛盾を解消するため、発電事業者からの送電を無制限・無補償で中断できる制度を柱にすえた。
一方、制度見直しでは出力抑制を住宅用も対象にした。再生エネの普及のためには一般家庭の制度参加が欠かせないが、制度の全面的な見直しが避けられなくなった今、一歩後退を余儀なくされた。経産省は「住宅用での出力抑制は最低限とするルールを作る」(新エネルギー対策課)という。
再生エネ買い取り制度は、国民の負担を前提としている。買い取り費用は電力料金に上乗せする形で徴収されている。経産省の試算では、すでに設備認定された電力をすべて受け入れたと仮定すると、毎月の電気代が約700円あがる。
実は再生エネ先進国ドイツでも国民負担の増加が問題化。これまで何度も制度の見直しを繰り返し、現在は固定価格買い取り制度そのものをやめる方向で検討している。政府は、国民が負担増をどこまで受け入れられるのかをにらみながら、制度の抜本見直しを進めることになる。(塩原永久/SANKEI EXPRESS)