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米、量的緩和を終了 ゼロ金利長期化示唆 マネーの流れ変調も 焦点は利上げ時期

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米、量的緩和を終了 ゼロ金利長期化示唆 マネーの流れ変調も 焦点は利上げ時期

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米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策=2014年10月29日公表  米連邦準備制度理事会(FRB)は29日(日本時間30日)、国債などを大量に購入して市場に資金を流し込む量的緩和政策を今月末で終えることを決めた。連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で公表した。月額150億ドルの購入額を11月からゼロにする。

 FRBは声明で、労働市場の状況について「確実な雇用の増加と失業率の低下を伴って、いくらか改善している」と評価した。ただ、物価上昇率が目標とする2%を下回っていることも踏まえ、今後も緩和的な金融状況を続けることも強調。量的緩和政策による国債などの買い取りは終了させるものの、保有する国債などの規模は維持して、市場にまわる資金を減らさないようにするとしている。

 また現在のゼロ金利状態を「相当の期間」続けるとの表現も維持した。利上げ開始時期は失業率や物価上昇の動向によって前後するとし、経済状況を見据えながら柔軟に対応する。政策決定には1人が反対。量的緩和継続などを主張した。

 現在の量的緩和政策は2012年9月に始まった第3弾で当初は月額850億ドル分の購入が続けられたが、今年1月から購入額が段階的に減らされていた。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS

 ≪マネーの流れ変調も 焦点は利上げ時期≫

 FRBは29日、2008年のリーマン・ショック後3回目となる量的金融緩和策を終え、終了が世界経済に与える影響が今後焦点となる。日本と欧州、中国など新興国の景気が精彩を欠き、世界経済が減速感を強める中で、マネーの流れに変調をきたす恐れがあるためだ。国際金融市場は息を凝らしてマネーの行方を見守っている。

 先手打つ新興国

 「資金流出の混乱に対処できる」。今月中旬に米ワシントンで開かれた国際金融会議で、ブラジルのマンテガ財務相は量的緩和終了への対応に自信を示した。インド準備銀行(中央銀行)のラジャン総裁も「準備はできている」と胸を張った。景気の足取りがしっかりしてきた米国が量的緩和を終え、15年中にも予想される利上げを実施すればマネーのドル回帰が加速し、経常収支が悪化しているブラジルなど新興国から資金が流出する恐れがある。流出に歯止めをかけようとブラジル中央銀行は29日、予想外の利上げに踏み切り、先手を打った。

 ブラジルの措置は、13年5月にベン・バーナンキ前FRB議長(60)が量的緩和の縮小に言及しただけで、世界の金融・資本市場が大混乱に陥ったことが教訓になっている。

 前議長の発言をきっかけに新興国で資金流出が始まり、各国の通貨は軒並み下落。今年初め以来、対ドルでロシアのルーブルは23%急落し、ブラジル・レアルと南アフリカ・ランドはそれぞれ4%下げた。米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、ルーブルは今月29日、最安値を更新。円やユーロも下落している。

 世界経済の司令塔を担う20カ国・地域(G20)は米国に「明確な説明と注意深い対応」を要請。新興国側は対外債務への依存を減らすなど量的緩和の終了に備え、着々と準備を進めていた。

 衝撃はこれから

 ただ、今回のFRBの決定は未曽有の金融緩和を元に戻す序章にすぎず、事実上のゼロ金利政策を解除し、利上げを始める際の衝撃は計り知れない。国際通貨基金(IMF)は、米利上げ開始で金融市場が急変動すれば「世界全体が保有する債券に総額3兆8000億ドル(約410兆円)超の損が生じる可能性がある」と試算する。

 「必要に応じて適切な金融政策を取ることを躊躇(ちゅうちょ)しない」(日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁)、「リスクに対応するため追加手段を講じることで理事会は一致している」(欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁)。米国が金融引き締めを模索するのに対し、日欧は追加の金融緩和に言及する正反対の姿勢も市場の波乱要因だ。

 IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事(58)は先進国の中央銀行の足並みが乱れ、金利や為替の動きを不安定にすると警戒。「世界経済を覆う深刻な暗雲となっている」と懸念を隠さない。

 前回と異なる条件

 ジャネット・イエレンFRB議長(68)は今月中旬に開かれた有識者との非公式会合で「米経済は高成長を維持し、物価も徐々に上がる」と政策運営に自信を示した。思惑通り15年中とみられる利上げに踏み切ることができれば、11年ぶりとなる。

 米国を除く先進国・地域や新興国の景気は軒並みさえず、世界経済の成長路線は揺らいでいるのが実情だ。前回の金融引き締め局面と決定的に条件が異なっており、米利上げのシナリオ実現の前に立ちはだかる壁となりそうだ。(共同/SANKEI EXPRESS

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