SankeiBiz for mobile

中国の女性活動家拘束1カ月 広がる波紋

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの国際

中国の女性活動家拘束1カ月 広がる波紋

更新

4月11日、香港で、中国当局に拘束された5人の女性人権活動家の釈放を訴える支持者ら=2015年、中国(ロイター)  【国際情勢分析】

 中国で3月上旬、女性の権利向上を訴える女性活動家5人が公安当局に拘束され、波紋を広げている。欧米メディアはこの問題で中国批判を続け、米国の政府高官や有力政治家も相次いで釈放を求めた。

 25歳から32歳の5人

 拘束された女性活動家は、李●●(=女へんに亭、=女へんに亭)氏(25)、韋●●(=女へんに亭、女へんに亭)氏(26)、王曼氏(32)、鄭楚然氏(25)、武●●(=山へんに榮、山へんに榮)氏(30)の5人。いずれも3月8日の「国際女性デー」に合わせて6、7日に北京や広州で、公共交通機関での痴漢などセクハラ行為の撲滅を呼びかける活動を計画していたところ、当局に次々に拘束され、「騒ぎを起こそうとした」容疑で刑事勾留された。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版、3月27日)は社説でこの問題を取り上げ、「中国での政府批判やその他の言論に対する抑圧は、1989年の天安門事件以降で最悪の状態にある」とする人権団体の見解を伝えた。

 さらにニューヨーク・タイムズ(電子版)は4月5日、報道規制にもかかわらず事件が中国内で知れ渡り、活動家の釈放運動が起きているとして、「釈放を求め、1100人以上が署名という危険な手段に出た」と報じた。

 これに次期米大統領の有力候補と目されるヒラリー・クリントン前国務長官(67)が反応し、7日、自身のツイッターで「中国は女性活動家の拘束をやめるべきだ。許し難いことだ」と中国当局の対応を批判した。クリントン氏は1995年9月、北京で開かれた第4回世界女性会議で、「人権とは女性の権利であり、女性の権利とは人権である」と演説している。

 10日にはジョン・ケリー米国務長官(71)が声明で、「中国政府は彼女たちを黙らせるのではなく、むしろ支持すべきではないのか」と訴え、5人の無条件での即時解放を求めた。

 矛盾に満ちた当局の主張

 5人が拘束された直後の3月8日、中国共産党機関紙人民日報(電子版)は、中国で女性の権利が向上していると指摘し、「男女平等の価値観をさらに押し広めるため、なお不断の努力をしなければならない」と呼びかける評論員論文を掲載。翌9日には、世界女性会議の開催20周年を記念し、米ニューヨークで今年9月、中国政府が世界女性サミットを国連と共催すると発表した。

 矛盾に満ちた中国のアピールに対し、英紙ガーディアン(電子版、4月5日)は社説で「極めて異常なのは、女性活動家らを拘束したのと同時に、中国が男女平等の進展を呼びかけていることだ」と批判した。

 社説はさらに、拘束された5人は、単に、ビラやステッカーを配布しようとしただけだとして、「政府の政策に挑戦したわけではないし、天安門事件やチベット問題といった敏感な問題に触れようとしたわけでもない。法律の順守を追求したに過ぎない」と指摘し、当局の“過剰反応”を非難した。

 最も乱用されやすい罪名

 5人の拘束期間は1カ月を超えたが、4月上旬の時点では、正式な逮捕や起訴はされていないもようだ。

 米ニューヨーク大のジェローム・コーエン教授は英紙フィナンシャル・タイムズの中国語版(電子版、4月1日)への寄稿で、「『騒ぎを起こそうとした』容疑は、中国の刑法の中で最も曖昧で、当局に最も乱用されやすい罪名の一つである」「彼女らの宣伝資料の中には、刑法が定める扇動的言論に抵触する部分はどこにもない」と指摘。今回の事件について「セクハラという違法行為を告発する女性を罰するのは、(公務員の汚職などの)不正に気付いた国民に沈黙を保つよう奨励するのに等しく、安定をもたらすどころか悪人を助けることになる」と批判した。

 その上で「世界女性会議の北京開催20周年を祝う際に皮肉られるだけだ」として、中国当局に対し、5人を起訴しないよう求めた。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

ランキング