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政治
前ソウル支局長 出国禁止解除、帰国 韓国側、「政治的配慮」見返り要求も
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4月14日午後、東京・羽田空港に到着した産経新聞の加藤達也前ソウル支局長=2015年、東京都大田区(早坂洋祐撮影) 韓国政府は14日、朴槿恵(パク・クネ)大統領(63)への名誉毀損(きそん)で在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対する出国禁止措置を14日付で解除した。昨年8月7日から8カ月以上続いていた出国禁止措置は日韓の外交問題に発展し、日本政府が早期の解除を求めていた。加藤前支局長は14日夜、日本に帰国した。
出国禁止措置はこれまでに8回延長されていた。禁止措置の期限である15日を前に、ソウル中央地検は13日、出国禁止の必要性が「ある程度解消された」として、法務省に出国禁止措置の解除を求めることを決定、要請していた。
聯合ニュースによると、ソウル中央地検は解除理由について、「(加藤前支局長が)今後の公判に必ず出席することを確約しており、産経新聞社も出廷を保証している」とした上で、加藤前支局長の母親が病気であることや、加藤前支局長が家族と長期間離れて過ごしていることなどについて、「人道的に配慮した」と強調した。
また、「公判では(加藤前支局長の)記事内容が虚偽であるとの司法判断が下され、最も重要な争点の審理が終わった」「加藤前支局長も司法判断に異議がないとし、今度の事件に遺憾表明している」とした。
加藤前支局長が産経新聞の今月7日付朝刊に掲載された手記で、「噂を事実上否定した裁判長の見解に異を唱えるつもりはない」「『産経問題』が日韓間の外交問題になっているのは本意ではなく、残念なことだ」との考えを示したことを指しているとみられる。
産経新聞社は7日付朝刊に小林毅東京編集局長のコメントも掲載し、起訴の取り下げと出国禁止の解除を求めていた。次回公判は20日に行われる予定。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)
≪韓国側 「政治的配慮」見返り要求も≫
韓国政府は、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対する出国禁止措置の解除に踏み切った。安倍晋三政権はこの間、韓国への認識について「基本的価値を共有する」との文言を削除するなどして圧力をかけ続けてきた。ただ、韓国で公判中の外国人の出国禁止措置が解除されるのは極めて異例。韓国側が“政治的配慮”の見返りを安倍晋三政権に求めてくる可能性も取り沙汰されている。
安倍政権は、加藤前支局長が昨年10月、朴槿恵大統領への名誉毀損で在宅起訴された当初から、「言論の自由に反する」として韓国の対応を問題視していた。
韓国当局が加藤前支局長の出国禁止の延長措置を繰り返す中、安倍首相は2月の国会施政方針演説で、韓国に関し「基本的な価値や利益を共有する」とのくだりを省略。3月には、日本の外務省がホームページの韓国に関する記述から「基本的価値を共有する」を削除するなど、文字通り“無言の圧力”をかけ続けた。
これに対し、韓国メディアは「拙劣で子供じみたもの」(保守系紙、朝鮮日報)と反発したが、韓国の日本研究者の間では事態を憂慮し関係改善を模索する動きが広がっていった。特に今回、出国禁止措置がさらに延長(3カ月間)されてしまうと、日韓国交正常化50周年の記念日である6月22日前の事態打開は難しくなり、記念事業に暗い影を落としかねなかった。
今月8日にソウルで行われた韓国外務省傘下の国立外交院主催の日韓関係セミナーで、朴●(=吉を2つヨコに並べる)煕(パク・チョルヒ)ソウル大日本研究所長が加藤前支局長の問題について、「起訴は維持しても出国禁止は解除する必要がある。加藤前支局長を韓国に縛っておくのは韓国にとって負担だ」と発言し関心を集めていた。
一方、司法関係者によると、韓国で外国人が刑事訴追された場合、公判中は出国禁止措置が取られるのが通例だという。今回の解除について、この関係者は「何らかの政治判断が働いたのだろう」との見方を示す。日本に譲歩を迫るための政治的配慮ではないかとの見方がくすぶっている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)
一方で、前支局長が産経新聞のウェブサイトに掲載したコラムで名誉毀損罪に問われている裁判は、なお継続している。これは重大な言論の自由の侵害であり、一刻も早い起訴の取り下げを求める。
今回の出国禁止措置に対し、ご心配いただいた読者のみなさま、幾度となく抗議の意思を表明し、同措置解除を求めるなど尽力していただいた日本政府、国会議員はじめ関係者の方々、国内外のメディア、団体に深く感謝いたします」