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出国禁止延長の取り消し求め提訴 産経前ソウル支局長
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首都ソウル市内の大型テレビモニターで朴槿恵(パク・クネ)大統領の記者会見を見る人たち=2015年1月12日、韓国(AP) 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領への名誉毀損(きそん)で在宅起訴され、半年にわたり出国を禁止された状態が続く産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)は6日、韓国当局による出国禁止の延長措置は違法であるとして、黄教安(ファン・ギョアン)法相に対し、この措置の取り消しを求める行政訴訟をソウル行政裁判所に起こした。加藤前支局長は、行政訴訟の判決が確定するまで、出国禁止延長措置の執行停止を求める仮処分もソウル行政裁判所に申し立てた。
加藤前支局長の出国禁止をめぐっては、ソウル中央地検が昨年8月7日付で禁止措置を取って以降、8回延長されており、少なくとも4月15日まで出国できない状況に置かれている。
行政訴訟の訴状で、加藤前支局長は出国禁止は韓国の出入国管理法で「必要最小限の範囲でなければならない」「公務を遂行する便宜のためや、行政制裁を加える目的で行ってはならない」などと定められていると指摘。自らが問われている情報通信網法違反(名誉毀損)の場合、出国禁止の延長が繰り返されるほどの重罪とはいえないと主張した。
また、(1)証拠はすべて確保されており、証拠隠滅を懸念する必要はない(2)今回の在宅起訴は国際的な関心事で、公判には誠実に出席する-などと強調。昨年10月1日付で東京本社社会部編集委員への異動も決まっており、日本に帰国できない状況が続くと、職務への影響だけでなく経済的負担とともに「家族の精神的苦痛も甚大だ」とした。
その上で、出国禁止は基本的人権を制限する処分であり、必要最小限の範囲でなければならないにもかかわらず、黄法相が1月に、延長したのは裁量権の逸脱・乱用に当たるとして、取り消しを求めた。
加藤前支局長の弁護人はこれまで、昨年9月30日付でソウル中央地検に出国禁止解除要請書を、10月15日付でソウル中央地裁に出国許可申請書をそれぞれ提出。今年1月9日にも、黄法相やソウル中央地検トップの金秀南(キム・スナム)検事長、ソウル中央地裁刑事部に、出国禁止措置を速やかに解除するよう文書で求めた。しかし黄法相はソウル中央地検の要請を受け、1月16日から3カ月間の出国禁止の延長を認めていた。
加藤前支局長に対する4回目の公判は23日、ソウル中央地裁で行われる。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)
≪朴政権の「メディア口封じ」 司法も異議≫
朴政権下の韓国で、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長をはじめ、メディア側が訴えられるケースが相次ぐ中、司法界から異議を唱える声が上がり始めた。「“メディアの口封じ”にブレーキ」(韓国紙ハンギョレ)がかかるのか関心を集めている。
「シャルリーはペンを折らなかった」(朝鮮日報)
「風刺は止まらない」(中央日報)
韓国大手各紙は1月14日付紙面で、イスラム過激派に銃撃されたフランスの風刺週刊紙、シャルリー・エブドが事件後初めて掲載したイスラム教の預言者、ムハンマドの風刺画を転載。「表現の自由」を守ったシャルリー・エブドを評価した。
朴政権下でメディアに対する民事・刑事での法的措置が頻発しているが、こうした風潮と無関係ではなさそうだ。法的措置は特に、昨年4月のセウォル号沈没事故以降に急増。大統領府側と報道側の間で争われている民事・刑事の裁判などは約10件あるとされる。
大統領府側に名誉毀損で告訴された経験をもつ韓国誌記者は「(大統領府は)メディアの批判や監視機能などに対し敏感に反応しすぎるようだ」と指摘する。
こうした中、朴大統領の実弟、朴志晩(チマン)氏に関する虚偽事実を記事に書いたなどとして起訴された韓国誌記者らに対する控訴審判決で、ソウル高裁の裁判長が1月16日、1審に続き無罪を言い渡し、「言論の自由は国家権力を合理的方法で監視・規制する手段である」と強調した。
また、セウォル号事故に絡むハンギョレの報道に対し、大統領府側が起こした名誉毀損の損害賠償請求でも昨年12月下旬、大統領府側が敗訴。民事・刑事訴訟によってメディアを押さえ付けようとする朴政権の手法に、司法から異議が示されたとして注目された。
米国の国際人権団体「フリーダムハウス」は1月下旬、2014年の世界各国の「自由度」を評価した年次報告書で、「沈没事故後に朴大統領の実績に対する国民の批判への弾圧が増えた」などとして、韓国の評価を下げている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)
・出国禁止は必要最小限の範囲で行われなければならない
・出国禁止の延長が繰り返されるほどの重罪を問われているとはいえない
・公判には誠実に出席する
・日本に帰国できないために受ける不利益は甚大である
・出国禁止の延長措置は法相の裁量権の逸脱・乱用である