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【産経前ソウル支局長公判】ソウル行政裁、出国認めず 申請棄却 外務省「極めて遺憾」

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【産経前ソウル支局長公判】ソウル行政裁、出国認めず 申請棄却 外務省「極めて遺憾」

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1月19日に行われた公判に臨むため、ソウル中央地裁に入る加藤達也前ソウル支局長=2015年、韓国・首都ソウル(川口良介撮影)  韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領への名誉毀損(きそん)で在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(48)が、自らへの出国禁止延長措置の執行停止を求めて申し立てた仮処分の審尋が13日、ソウル行政裁判所で行われ、李承●(=土へんに宅)(イ・スンテク)裁判長は申し立てに理由がないとして棄却する決定を下した。

 出廷した加藤前支局長は「これまでに開かれた3回の公判にも誠実に対応してきた」と強調。昨年10月に東京本社社会部への異動が発令されたにもかかわらず日本に帰国できないため、「国民の知る権利に応えるという記者としての役割を果たせていない」などと意見陳述し、出国禁止延長措置の執行停止を求めた。

 また、産経新聞社も「(日本に残された加藤前支局長の)家族は甚大な精神的苦痛を受けており、人道上無視できない」と指摘した上で、出国禁止延長措置の執行が停止されて加藤前支局長が日本に帰国したとしても、「裁判に必ず出席することを保証する」などとした上申書を裁判所に提出した。

 これに対し、李裁判長は棄却理由として、(1)加藤前支局長は韓国に4年以上生活し、多少、在留期間が延びても耐えられないほどとは言えない(2)加藤前支局長の家族は韓国入国を禁止されていない-などとした。

 加藤前支局長は今月6日、韓国当局による出国禁止の延長措置は違法であるとして、黄教安(ファン・ギョアン)法相に対し措置の取り消しを求める行政訴訟を起こすとともに、行政訴訟の判決が確定するまで執行の停止を求める仮処分を申し立てていた。

 加藤前支局長の出国禁止をめぐっては、ソウル中央地検が昨年8月7日付で禁止措置を取って以降、8回延長されており、加藤前支局長は現在、少なくとも4月15日まで出国できない状況に置かれている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS

 外務省の川村泰久報道官は13日、記者団に「報道・表現の自由と日韓関係の観点から極めて遺憾だ。韓国側が何の措置もとらず、事態が何ら改善していないことは誠に残念で、引き続き適切な対応を求めていく」と述べた。(SANKEI EXPRESS

 ≪「人道上問題」 国際社会の批判も無視≫

 産経新聞の加藤達也前ソウル支局長側は、これまでも検察や裁判所などに出国禁止措置の解除をたびたび求めてきたが、いずれも“無視”されている。人道上問題があるとして国際社会から批判の声が上がる中、日韓の外交問題にも発展している。

 加藤前支局長の弁護人は昨年9月30日付でソウル中央地検に出国禁止解除要請書を、10月15日付でソウル中央地裁に出国許可申請書をそれぞれ提出した。

 今年1月9日にも、黄教安法相やソウル中央地検トップの金秀南(キム・スナム)検事長(当時)、ソウル中央地裁刑事部に、出国禁止措置を解除するよう文書で要請。しかし、黄法相は1月16日から3カ月間の出国禁止の延長を認めた。昨年8月に出国禁止措置が取られてから延長は8回目となる。

 韓国当局による出国禁止措置については、海外メディアも懸念を示している。

 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は昨年9月、「(加藤前支局長の)行動の制限を解くよう当局に求める」とする声明を発表。フランス通信(AFP)も「(加藤前支局長は)行動の自由が奪われている」と問題視した。

 また、米紙ワシントン・ポスト(電子版)は昨年12月、韓国政府が報道機関を「弾圧」している実態を批判的に報じる中で、加藤前支局長の妻子は日本に帰国したものの、本人は昨年8月から出国を禁止されている状況にも触れた。

 加藤前支局長への出国禁止延長措置は日韓関係にも影響を及ぼしている。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は1月15日、「人道上、大きな問題だ。韓国側に懸念を伝える」と指摘。加藤前支局長の在宅起訴にも言及し、「民主国家としてあるまじき行為だ」と批判した。日本側は1月19日の日韓外務省局長級協議の場で、適切な対応を韓国側に要求している。

 これに対し、韓国外務省の報道官は「司法当局が裁判に必要な期間を考慮し、関連法に基づいて取った措置だ」と述べるにとどまっている。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS

 【産経新聞社がソウル行政裁判所に提出した上申書のポイント】

・加藤前支局長が日本に帰国できないため、編集作業に多大な支障が生じている

・日本に残された家族たちの精神的苦痛は甚大で、人道上無視できない

・加藤前支局長が日本に帰国しても、義務づけられた裁判への出席を保証する

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