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韓国大統領名誉毀損初公判 「陰の実力者」 元側近の出廷が焦点
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初公判を終え、ソウル中央地裁を後にする際、加藤達也前ソウル支局長を乗せた車は抗議デモ団に囲まれ、生卵を投げつけられるなどの妨害行為にあった=2014年11月27日、韓国・首都ソウル(大西正純撮影) 産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の公判で鍵を握るのが、被害者とされる2人だ。朴槿恵(パク・クネ)大統領と元側近の鄭(チョン)ユンフェ氏。2人が会っていた噂を取り上げた加藤前支局長を有罪に持ち込むためには、検察側は噂が虚偽であることを立証しなければならない。検察側の申請で鄭氏の証人尋問が27日決まったが、「朴政権の陰の実力者」(野党勢力)ともされる鄭氏が実際に証人として出廷するかが焦点となる。
鄭氏は、朴大統領の国会議員時代に秘書室長などを務めた。検察側は鄭氏を参考人聴取し、その陳述内容や大統領府の出入り記録などから、朴大統領と鄭氏が会っていた事実はないと判断。加藤前支局長の在宅起訴に踏み切った。鄭氏は聴取の際に加藤前支局長を「処罰してほしい」との意思を述べている。
鄭氏をめぐっては、朴大統領の弟らと「マンマンフェ」という組織を作り、大統領府に影響力を保持、人事などに介入していると野党勢力が批判している。
公判で争点となりそうなのが、鄭氏の陳述内容だ。鄭氏は、朴大統領と会っていたと噂されたセウォル号沈没事故当日について、当初、「(漢江(ハンガン)南岸の)江南(カンナム)の自宅にずっといた」と証言していた。しかし検察側が鄭氏の携帯電話の通信記録を調べると、漢江北側の鍾路(チョンノ)区平倉(ピョンチャン)洞で通話していたことが判明。再度、聴取された鄭氏は「平倉洞で(占い師の)李(イ・サンモク)氏に会っていた」と前言を翻し、検察側は改めてその事実を確認した。
平倉洞は大統領府の北側にあり、2人が会っていたという李氏の事務所から大統領府の正門まで車で15分ほどの距離にある。
弁護側は「大惨事が起きた当日、何をしていたかは比較的、記憶に残っているものだ。鄭氏に何か、平倉洞にいたことを隠す必要性があったと思われても仕方がない」との見方を示し、鄭氏への反対尋問が実現した際に追及する方針だ。
鄭氏と李氏は16年のつき合いとされ、事故当日は約4時間一緒にいて沈没事故などの話をしたという。李氏は鄭氏同様、謎の多い人物で、韓国メディアによると、斡旋収賄(あっせんしゅうわい)の罪で服役した経歴をもつとされる。
法曹関係者によると、韓国では証人として出廷しなくても金銭罰(最大500万ウォン=約53万円)があるぐらいで、鄭氏が実際に出廷に応じるかは不透明だ。(ソウル 藤本欣也/SANKEI EXPRESS)
≪法廷内外騒然 市民団体が罵声、車にタマゴも≫
法廷内では「拘束せよ」と大声を張り上げ、敷地内では車に生卵を投げつけた。ソウル中央地裁で27日に開かれた加藤前ソウル支局長の事実上の初公判。保守系団体のメンバーらは妨害行為を繰り返し、法廷の内外で一時騒然となった。意見陳述で名誉毀損(きそん)を否定した加藤前支局長の冷静な姿とは対照的に、感情的な行動が目立った。
地裁には、午前10時の開廷の約2時間前から、日韓の報道関係者に加え、産経新聞を批判する保守系団体のメンバーらが現れ、公判直前までに100人以上が集まった。
加藤前支局長が出廷した際、カメラのフラッシュが一斉にたかれた。マイクを差し出す韓国メディアの質問に対し、加藤前支局長は答えず、毅然(きぜん)とした表情のまま、無言で法廷に向かった。
午前10時の開廷を前に30席余りの傍聴席はすでに満席で、立ち見を含め約70人が傍聴した。
韓国でも裁判所の敷地内での示威行為は禁止されている。しかし、保守系団体のメンバーらは傍聴席に入り、「加藤達也、韓国国民に謝れ」「加藤を拘束せよ」などと叫び、前支局長を非難するプラカードを掲げるなどして、複数の男性が退廷を命じられた。
公判は1時間余りで終了したが、団体メンバーらは裁判所を出ようとする加藤前支局長の乗った車を取り囲み、複数の卵を投げつけた上、ボンネットに横たわるなどして通行を妨害。「謝罪」を迫る紙を車体に貼り付けて気勢を上げた。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS)