ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
国際
ギリシャ支援 出口見えぬ神経戦 4月決着持ち越し
更新
会合で話すギリシャのヤニス・バルファキス財務相=2015年4月24日、ラトビア・首都リガ(AP) 世界経済の大きな不安要素となっているギリシャの債務問題への懸念が強まってきた。欧州連合(EU)のギリシャ金融支援の交渉は24日のユーロ圏財務相会合が物別れとなり、目標の「4月決着」が5月以降に持ち越された。だが、財政緊縮策を迫るEU側と拒否するギリシャの対立の溝は深く、ギリシャの債務不履行(デフォルト)やユーロ圏離脱の火種を抱えた神経戦の打開はみえない。
ギリシャのアレクシス・チプラス首相(40)は26日、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(60)と電話会談した。ギリシャ側の説明では、双方は「互いに有益な早期解決」を目指す考えで一致した。財務相会合の決裂を受け、ギリシャはEU最大の実力者の協力を確認する狙いがあったとみられる。
欧州メディアによると、24日の会合は険悪な雰囲気だった。凍結中の融資72億ユーロ(約9000億円)の実行条件となる新たな財政改革案をギリシャは提出せず、ギリシャのヤニス・バルファキス財務相(54)には「素人」「時間の無駄」と厳しい批判が飛んだ。
EUとギリシャは2月下旬、6月末までの支援延長を決定し、4月末までに必要な改革での合意を目指してきた。だが、EUが求める年金削減や労働市場改革などにギリシャは抵抗。交渉は進まず、デイセルブルム議長も「時間は切れつつある」と強調した。
今後は5月11日の次回会合に向けた交渉に焦点が移るが、懸案はギリシャの資金繰りだ。4月末に17億ユーロの年金と公務員給与の支給を控え、5月は国際通貨基金(IMF)への計9億ユーロ超の支払いなどがある。6~8月は欧州中央銀行(ECB)への返済などで計約90億ユーロが必要だ。
ギリシャ政府は当面の資金確保のため、地方自治体や公的機関の余剰資金を中央銀行に移管させる異例の対応に乗り出した。詳細な財政状況は不明だが、6月までは持ちこたえるとの見方もある。ただ、国内では反発も上がり、政権支持率も低下してきた。
EU側に譲歩の気配はない。財務相会合では交渉が間に合わず、ギリシャがデフォルトした場合の「プランB」を検討すべきだとの意見も上がった。ギリシャがユーロ圏を離脱しても欧州に「深刻な影響はない」(ショイブレ独財務相)との認識があるためだ。
しかし、想定外にリスクが拡大する恐れは否めず、ジェイコブ・ルー米財務長官(59)は「合意に失敗すれば、世界経済の不安定さを増大させる」と懸念を表明している。(ベルリン 宮下日出男/SANKEI EXPRESS)
≪デフォルト、ユーロ離脱 市場も影響読めず≫
外国人投資家が保有するギリシャ債券残高は約430億ユーロ(約5兆5000億円)と2009年比で8割も減少している。ECBの保有分を除くと、民間の保有残高は小さいとみられ、ギリシャのデフォルトで、直ちに市場がパニックに陥るリスクは大きくないとの見方がある。
だが、日銀の幹部は「デフォルトやユーロ圏離脱の場合、どんな影響が出るのか、正直なところよく分からない」と打ち明ける。
1999年に単一通貨ユーロが誕生して以来、ユーロを放棄した国はなく、ギリシャが離脱した場合の影響は予測できない。離脱が現実味を帯びれば、格付け会社が「ユーロ圏は弱体化する」と判断し、ギリシャだけでなく、他のユーロ各国の国債も格下げされる恐れが出てくる。「そうなれば投資家のリスク回避姿勢は強まる」と、第一生命経済研究所の田中理主席エコノミストは分析する。
EUによるギリシャ支援の着地点が見えない中、市場では株価や為替の急変動への警戒感が高まり始めており、日銀も30日の金融政策決定会合で、この問題をリスク要因として議論するとみられる。(藤原章裕/SANKEI EXPRESS)