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政治
G20閉幕 「世界経済にリスク山積」 国際金融秩序で中国と日米が衝突
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記念撮影に臨むG20財務相・中央銀行総裁会議の参加者ら=2015年4月17日、米国・首都ワシントン(AP) ワシントンで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は17日、共同声明を採択して閉幕した。世界経済の成長が力強さに欠け、為替変動や長期化する低インフレなどのリスクが山積していると指摘し各国に成長力強化を要請。9月の次回会合までに各国が投資戦略を策定することで合意した。
今回のG20は、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバーが固まってから初めての国際会議。中国はAIIB設立の意義を説明し新興国の支持を集めて存在感を示した。新興国の発言力を高める国際通貨基金(IMF)改革は米議会が反対しており、G20は今回も有効な打開策を示せなかった。失望する新興国を中心にAIIB支持がさらに広がりそうだ。
声明は世界経済の現状について「成長は緩やかなままで、一様でない道筋をたどっている」と分析。日本と欧州経済の改善は歓迎したが、新興国の成長には「依然ばらつきがある」と懸念を示した。回復を支えるため「多くの先進国で緩和的な金融政策が必要」と強調。ただ「負の波及効果を最小化するため、注意深く調整されるべきだ」とも明記し、利上げ時期が近づく米国を念頭に、金融政策の変更が新興国経済に影響を及ぼさないよう配慮を求めた。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪国際金融秩序で中国と日米が衝突≫
高い経済成長が見込めるアジア太平洋の覇権争いが激化してきた。自らが主導するAIIBを引っ提げ、米首都ワシントンに乗り込んだ中国は、G20で存在感を示した。攻勢をかける中国に、国際金融分野の既得権益を奪われかねない日米は焦りを隠せない。
「アジアかどうかに関係なく、どこの国でも歓迎する」。17日午後、G20閉幕後のワシントンでの講演で、中国の朱光耀財政次官が声を張り上げた。朱氏はAIIBの門戸の広さや公正な意思決定の徹底を冗舌に説明し創設メンバーに加わらなかった日米にも誘い水を向けた。
中国が狙うのは世界銀行、IMF、アジア開発銀行(ADB)を柱とする国際金融秩序の刷新だ。中国は第2位の経済大国にのし上がったが、国際金融の主導権は依然、日米欧が握っている。
G20の共同声明ではAIIBへの言及はなかったが、議長を務めたトルコのババジャン副首相は閉幕後の記者会見で「トルコ副首相としては歓迎する」と持ち上げた。
「世界は多極化し、国際秩序の変化が加速している。国際的な仕事を大国が独占してはならない」(中国の習近平国家主席)。新興国に共通する既存体制への不満が、AIIBが支持を集める原動力になったのは明らかだ。
AIIBは57カ国が創設メンバーだ。その中に先進7カ国(G7)に名を連ねる英国、ドイツ、フランス、イタリアも含まれていることが日米の対応を難しくしている。
日本の財務省は当初、G7の結束の強さを疑わず、先進国からの参加はないだろうと高をくくっていた。しかし英国が参加を決めると、雪崩を打つように、他の3カ国も加盟を表明。財務省幹部は「AIIBの信用力が一気に増した」と驚き、読みの甘さを認める。
麻生太郎財務相はG20閉幕後も「AIIBが融資先を審査する能力を持っているとは言い難い」と述べ、加盟に消極的な姿勢を崩さなかった。だが政府内では「参加しなければ国際的な地位が低下するだけだ」(経済官庁幹部)との声が日増しに強まっている。
ルー米財務長官はG20閉幕後の記者会見で、現在の国際金融の枠組みの中で「米国の大きな役割を維持したい」と述べ、引き続き牽引役となっていく決意を示した。だが新興国の発言力を高めるIMFの改革は米議会の反対で実現せず、米国の求心力低下は否定できない。
麻生、ルー両氏は16日の会談で、融資や組織運営などの面でAIIBに国際基準を守らせるには、既存の国際機関との協調融資が有効との認識で一致した。日米それぞれが大きな影響力を持つ世界銀行、ADBを融資にかませ、AIIBの運営に間接的に関与したいとの思惑が透けるが、中国が乗ってくるかどうかは不透明だ。
17日のニューヨーク株式市場はギリシャ問題への不安が高まり、株価は大幅に下落した。AIIBをめぐる政治ゲームに各国が気を取られ、足元の危機への取り組みが遅々として進まないことへの警鐘との受け止めも広がっている。(共同/SANKEI EXPRESS)