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「イスラム国」のテロ声明 乏しい信頼性
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パキスタンとアフガニスタンで発生したテロで、中東のシリアやイラクで勢力を広げるイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が関与したとの声明が相次いで出された。イスラム国とみられるグループは今年1月、この地域を「ホラサン州」として新たに領土とすると宣言している。しかし、パキスタンとアフガンの当局者からは、イスラム国のテロ関与には否定的な見方ばかりが表明され、現段階では声明の信頼性は乏しそうだ。
パキスタンでは今月13日、国内少数派のイスラム教シーア派住民を乗せたバスが南部の商業都市カラチで武装集団に襲撃され、45人が銃撃を受けて死亡した。
シーア派をテロの標的にしてきた国内多数派スンニ派の過激組織「ジュンダラ」が犯行を認める一方、ジュンダラが忠誠を誓うイスラム国の犯行声明もネット上で流れた。現場からは、イスラム国の犯行だとするチラシも発見された。
事実であれば、イスラム国がパキスタンでのテロを起こした初めての事件となるが、パキスタンのアイザズ・アフマド・チョードリー外務次官は地元メディアに「イスラム国の犯行とするのは時期尚早だ」と否定的な見方を示した。
パキスタンの政治・安全保障問題評論家、ハッサン・アスカリ・リズビ氏は産経新聞の電話取材に「この地域ではイスラム国に、国際テロ組織アルカーイダのような指導力はない。地元のスンニ派過激組織が注意を引くためにイスラム国の名を使ったのだろう」と指摘した。ただし、「イスラム国が主張するような過激思想は存在する。地元スンニ派過激組織は、イスラム国と同盟関係を結ぶ潜在性を持っている」と述べた。
チョードリー外務次官は、むしろ、「インドの情報機関『研究分析局』(RAW)がパキスタンで多様なテロ活動に関与している」と述べ、カシミール地方の領有権などをめぐり軍事的に対立するインドの陰謀説を示唆している。
パキスタン政府はかねて、インドが南西部バルチスタン州のテロ組織を支援していると主張してきた。インドはこうした非難を、重ねて否定しているものの、パキスタン軍は最近も、司令官を集めた会議での声明で「パキスタンでのテロの扇動にRAWが関与していることに深刻な留意を表明した」と発表した。
また、パキスタン政府は18日、自国の情報機関、3軍統合情報部(ISI)がアフガン政府と武装勢力に関する情報を共有することで合意したと発表し、インドを刺激した。
一方、アフガンでは、東部ナンガルハル州ジャララバードの銀行前で4月18日、自爆テロが発生し、地元パジワク通信は、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の元広報担当者で、現在はイスラム国の広報担当者を名乗るシャヒドゥラー・シャヒード氏が犯行声明を出したと伝えた。
事実であれば、イスラム国によるアフガンでの初のテロとなるが、北大西洋条約機構(NATO)の現地報道官は、「イスラム国が攻撃を指揮したり、支持したりした証拠は見つかっていない」と声明で明らかにした。アフガン国防省副報道官も産経新聞の取材に「政府としてイスラム国の犯行と確認していない」と述べ、疑問を呈している。
シャヒード氏は昨年、イスラム国に忠誠を誓い、タリバン運動を放逐されている。イスラム国はアフガンで構成員を募っていることが明らかになっているが、詳しい活動内容はわかっていない。
このほかアフガンでは今年2月、シーア派住民約30人が武装集団に拉致され、イスラム国の犯行説が報じられたが、その後、アフガンのイスラム原理主義勢力タリバンの犯行だったとの見方が有力になっている。
アフガンの政治評論家、モハンマド・ハッサン・ハキヤー氏は産経新聞の電話取材に「アフガン人の多くはイスラム国が影響を受けているワッハーブ主義を嫌っている」と指摘。「タリバンを離れてイスラム国に加わった者は、内部で不満を募らせたか、カネが足りないと感じている連中だ」とし、「タリバンとイスラム国の間ではすでに衝突が起きている」と述べた。(ニューデリー支局 岩田智雄(いわた・ともと)/SANKEI EXPRESS)