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スペクタクルな物語とインパクト重視 映画「天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~」 FROGMAN監督インタビュー
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「声優も一新して臨みました」と語るFROGMAN監督=2015年4月24日、東京都千代田区麹町(高橋天地撮影) まるで西から昇ったお日様が東に沈んでしまったかのような、絶対にあり得ないコラボレーション企画を、「これでいいのだ!」と言わんばかりに長編アニメーション映画という形で見事に実現させてしまった。
1つは、底抜けに能天気でパワフルなバカ父子の日常を描くシュールなギャグ作品「天才バカボン」シリーズ(1971~72、75~77年、90、99~2000年、よみうりテレビなどで放映)。いま1つは、ベルギーを舞台とする英児童文学(1872年、ウィーダ著)をベースに非業の死を遂げた少年と大きな愛犬を描く世界名作劇場「フランダースの犬」(1975年、フジテレビ系)。まったく毛色の違う両者を力業で同じ土俵に乗せて、FROGMAN(ふろっぐまん)監督(44)は1つのスペクタクル・ギャグ巨編へと仕立てたのだ。
タイトルは「天才バカヴォン~蘇るフランダースの犬~」と、どこかおどろおどろしく、おかしみも誘う。それもそのはず、本作は「天才バカボン」の生みの親、赤塚不二夫(1935~2008年)の生誕80周年記念企画と銘打ったもので、脚本と主人公「バカボンのパパ」の声も担当したFROGMAN監督は「常に『赤塚先生がこの映画を作ったらどう表現しただろう?』と考えて、最終的に到達したのがこの映画です。僕はそれぞれまったく内容が違う脚本を5本執筆しましたよ」と、試行錯誤の日々を振り返った。
《バカボン一家は、長男のバカボン(犬山イヌコ)と、自由人のバカボンのパパ(FROGMAN)、優しいママ(上野アサ)、弟のハジメちゃん(澪乃せいら)の4人家族。東京の片隅で毎日楽しく暮らしていたが、ある日を境に不審な男たちが次々と自宅を訪ねてくるようになる。彼らは暗黒組織「インテリペリ」の一味。なぜかパパの本名を知ろうと躍起になっていたが、パパの不規則発言に翻弄され、まったく成果が得られない。一計を案じたインテリペリの総帥ダンテ(村井國夫)は「バカボンからパパの本名を直接聞き出そう」と方針転換。「子供と仲良くなるには、子供が一番。それも特別な子供がな…」。ダンテは天国に召されたはずの名作「フランダースの犬」の主人公ネロ(瀧本美織)と愛犬パトラッシュの魂を現世に召還し、彼らを蘇らせ、バカボンが通う小学校にネロを転校させ、バカボンと同じクラスに潜り込ませる》
なぜ、コラボレーションの相手が「フランダースの犬」なのか。FROGMAN監督が重視したのは、スペクタクルな物語と観客へのインパクトだった。「『天才バカボン』のキャラクターたちだけの話に落とし込んで、例えば、バカボン一家の家に何かしてやれと、隕石でも落としたとしても、お客さんへのインパクトという点で疑問が生じます。映画のプロットが『えー、何それ?』と興味を持ってもらえるようなものでなければ、世間は決して許さないと、僕は思い込んでいたのです。それはあり得ないコラボレーションです」
当初、映画で有名になった地球外生命体の「エイリアン」や「プレデター」とのコラボレーションにも食指が動き、FROGMAN監督は本国の担当者に打診したが、諸事情で断られたという。だとすれば、もう「フランダースの犬」しかない…。「絵の才能に恵まれながら、放火の疑いをかけられ村八分となり、不遇な人生に終わったネロと、愛犬のパトラッシュが天国に行かず、実は地獄に堕ちていた…。彼らが人類に復讐する物語にすればいいのではないか?」。「天才バカボン」と「フランダースの犬」がタッグを組むことで生まれる唐突感は申し分なく、物語にもだいぶん奥行きが出る。
だが、「フランダースの犬」を制作した日本アニメーションがよく首を縦に振ったものだ。「『赤塚先生の生誕80周年記念作品ということでしたら話だけでも聞きましょう』とおっしゃってくださいました」とFROGMAN監督。社長や幹部の前で行ったプレゼンテーションでは、「映画はネロやパトラッシュを決してこけにするものではなく、ネロとパトラッシュが円満に天国に行けるような物語にしたいと強調しました。また、僕の中では、ネロとパトラッシュが天国に召されるのは納得できなかったし、一方で、本当はハッピーエンドを期待していたのに、あのあまりに残念な最期は子供ながらに悲しかったと、素直な気持ちを真摯(しんし)に伝えました」。社内ではコラボレーションに反対する意見も出たようだが、最終的にゴーサインが出るや、製作過程で内容に関する注文はほとんどなかったそうだ。
さて、本作を天国にいる赤塚が鑑賞したらどんな感想を述べるだろう。「映画制作の最初から最後まで、作品が完成した今でもずっと気になって仕方ありません。作品を赤塚先生の娘さんに見せるときはとても緊張しましたよ。恐らく赤塚先生は絶対に『面白いね』とは言ってくれないでしょう。ものすごい遊び慣れている方ですし、笑いについても僕なんかよりいっぱい考えていらっしゃる方だから、とても僕なんか及びません。怒られるか、怒られないかのどちらかかな。そもそも僕の作品が赤塚先生に褒められるなんてうぬぼれたことなんか言えません。怒られなかったら、まずは及第点かな」。FROGMAN監督は緊張した面持ちで偉大過ぎる先輩の気持ちを推し量った。5月23日、全国公開。(高橋天地(たかくに)、写真も/SANKEI EXPRESS)
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