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医療保険改革法成立 「国保」都道府県へ 自助努力で健康 受診控えの懸念も

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医療保険改革法成立 「国保」都道府県へ 自助努力で健康 受診控えの懸念も

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国民に広く負担を求める医療保険制度改革法が成立。医療費抑制の切り札となるか=2008年8月14日、東京都内(共同)  国民に広く負担を求める医療保険制度改革法が27日の参院本会議で、自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。赤字体質が続く国民健康保険(国保)の運営主体を2018年度に市町村から都道府県に移し、規模を大きくして財政基盤を安定させるのが柱。75歳以上の後期高齢者医療制度を支えるため、大企業社員や公務員の負担を増やす「総報酬割」を17年度に全面的に導入する。

 国保には自営業者に加え、所得の少ない年金生活者や非正規労働者らが加入している。保険料収入が少ない一方で、医療費が高く慢性的な赤字体質が続いている。このため、国は都道府県への移管とともに、17年度以降、毎年3400億円を国保に投入する。

 その財源を確保するため、大企業の健康保険組合や公務員の共済組合の負担を増やす。具体的には後期高齢者の医療費を支える支援金の算定方式を変更し、今年度から所得に応じた「総報酬割」で算出する割合を広げ、17年度に全面導入する。この影響で大企業社員らの保険料は上がる見込みだ。

 患者関連では、紹介状なしで大病院を受診した場合は、5000~1万円の自己負担を求める。また、入院時の食事代(現在260円)を、低所得者らを除き18年度から460円に値上げする。

 ≪自助努力で健康 受診控えの懸念も≫

 病気予防や運動に取り組めば、賞品と交換できるポイントや現金がもらえ、保険料の軽減も-。27日成立した医療保険制度改革の関連法は、自治体や健康保険組合による健康づくりを後押しする仕組みを盛り込んだ。あの手この手で医療費抑制につなげる狙いだが「受診控えを招きかねない」と懸念する声も上がる。

 インセンティブ改革

 26日の参院厚生労働委員会。安倍晋三首相は「自分で健康管理して生活習慣病にならない努力をする人に、良いことがあるというインセンティブ(動機付け)を与えるのは当然だ」と述べた。

 2020年度の財政健全化計画達成に向け、医療費をはじめ社会保障費の削減は避けられない課題。だが負担増と給付カットを繰り返すのにも限界がある。そこで、厚労省は「医者いらず」の人を増やそうと、健康づくり支援を強化する。

 16年度以降、自治体などが主催する健康教室への参加者らにポイントを付与する仕組みの拡充を関連法で明確化。18年度からは、安価な後発医薬品の普及で成果を上げた健保組合などは、高齢者医療向け支援金の負担が軽くなり、保険料の引き下げが可能になる。

 一連の政策は、国民に「自助努力」を求める安倍政権の姿勢と無縁ではない。4月16日の経済財政諮問会議では、民間議員が歳出効率化策として「個人の健康努力を支援し、医療・介護の必要を抑制。経済成長との二兎を得る」と主張。甘利明経済再生担当相も「インセンティブ改革を国民運動に」と前のめりだ。

 塩崎恭久厚労相は4月18日、糖尿病の重症化予防に熱心な広島県呉市を視察。協会けんぽ広島支部などの関係者を前に、関連法の意義を強調した。

 禁煙でポイント付与

 先行事例は各地にある。花王健保組合(東京)は07年、禁煙などの目標の達成度に応じて個人にポイント(マイル)を配る「健康マイレージプログラム」を始めた。マイルがたまれば健康器具などと交換できる。全員が参加した職場では、メタボリック症候群や予備軍と判定された人が35%から5年で27%に減った。

 静岡県三島市は、市民がトレーニング施設で汗を流したり町歩きしたりする回数に応じてポイントを付与。一定数に達すると懸賞に応募でき、当選すれば地元の野菜や施設の利用券が手に入る。

 岡山県総社市は、医療機関に1年間かからなかった国民健康保険の加入世帯に、現金1万円を支給。宮崎県高鍋町では地元の信用金庫と提携し、特定健診を受けた人に定期預金の金利を上乗せするサービスを始めた。

 会社を挙げて取り組むのはローソン(東京)。定期健診を受けない社員は、本人に加え上司も賞与が減額される。

 重症化に警鐘

 厚労省の担当者は「生活改善を意識する人が増えれば、医療機関通いを減らすことができ、不要な医療費支出を避けられる」と話す。

 だが、山形大大学院の村上正泰教授(医療政策学)は「インセンティブによる医療費抑制効果は実証されていない」と指摘。「現金目当てで必要な受診をせずに重症化して、かえって医療費がかかる事態も起きかねない」と警鐘を鳴らす。

 日本医師会は「健康寿命の延伸は大事だが、予防の取り組みで保険料に過度の差を設けるのは望ましくない」としている。(SANKEI EXPRESS

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