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サウジ最高裁、ブロガーに禁錮・むち打ち1000回…言論に酷刑 大産油国の圧政

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サウジ最高裁、ブロガーに禁錮・むち打ち1000回…言論に酷刑 大産油国の圧政

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オーストリアの首都ウィーンにある、サウジアラビアのアブドラ元国王の提唱で開設された宗教間・文化間対話国際センターの前で、ライフ・バダウィ氏の釈放を求めて抗議行動をする人々=2015年2月6日(AP)  サウジアラビアの最高裁は7日、インターネットに開設した討論サイトでイスラム教を侮辱したなどとして、人権活動家の市民ジャーナリスト、ライフ・バダウィ氏(31)に昨年言い渡されていた禁錮10年とむち打ち1000回の判決を支持する判断を下した。判決はこれで確定し、国王が恩赦を与えない限り、刑は執行される。大産油国への遠慮から国際社会の非難も腰砕け気味の中で下された残酷な判決に、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは「忌まわしい不当な決定であり、表現の自由にとって暗黒の日だ」とコメントした。

 サイト開設で逮捕

 AFP通信などによると、バダウィ氏は討論サイト「サウジ自由ネットワーク」を2008年に共同で立ち上げ、12年6月に悪名高いサウジアラビアの宗教警察に摘発、サイバー犯罪の規定で逮捕された。容疑は「自由に意見交換をするサイト(後に裁判所命令で閉鎖)を立ち上げたことは、イスラム教の侮辱と許されない政府批判につながる」というものだった。

 起訴され、地裁の1審で禁錮7年、むち打ち600回の判決を受けたが控訴。しかし、14年5月に上級審ではさらに重い禁錮10年、むち打ち1000回、旅行禁止10年、メディア利用の禁止、罰金100万リヤル(約3300万円)の判決を受けた。

 むち打ち1000回は、1週間に50回ずつ20週で行うというもので、今年1月9日に紅海に面した港湾都市ジッダのモスク(イスラム寺院)の外で最初の50回のむち打ちを受けた。刑は、金曜礼拝を終えたばかりの市民に公開された。

 国王が「再審」命令

 これに対し、国連、米国、欧州連合(EU)、バダウィ氏の妻と3人の子供が13年から政治亡命しているカナダなど、世界中から「非人道的だ。バダウィ氏は表現と信教の自由の権利を行使しただけだ」(米国務省)などと糾弾する声が上がった。こうした事態を受けてサウジ当局は、2回目以降のむち打ちを「被告の健康状態ではむち打ちに耐えられず、死亡する恐れがある」として、「医学的見地」を理由に延期。さらに、前国王の死去に伴って1月23日に即位したサルマン国王(79)が2審の判決の見直しを最高裁に命じていた。

 判決が覆ることを期待していたバダウィ氏の妻、エンサフさんは7日、カナダのケベック州からAFP通信の取材に電話で「最高裁の決定に打ちひしがれている。夫は最初のむち打ちの後の痛みがひどく、健康状態も悪いと聞く。きっと次のむち打ちには耐え切れない。早ければ12日にもむち打ちが再開されるとの情報があり、止めさせてほしい」と答えた。

 アムネスティ・インターナショナルの中東・北アフリカ部長、フィリップ・ルーサー氏は「ブログを書いたり、ネットで意見を交わすことは犯罪ではない。国際社会では一般化している行為で厳罰を下されるとは常軌を逸している」と語った。

 ノーベル賞候補に

 一連の裁判では、バダウィ氏の弁護士で人権活動家のワリード・アブ・アルカイル氏にも、禁錮15年とその後の15年の海外渡航禁止の判決が下されている。一方でバダウィ氏とアルカイル氏は、ノルウェーの国会議員の推薦により、今年のノーベル平和賞の候補にノミネートされている。

 2001年9月の米中枢同時テロでは、実行犯19人中15人がサウジアラビア出身の知識階級だった。犯行の背景には、サウジが世界最大の産油国であるが故にその“圧政”に目をつむる米政府への反感もあったとされる。国際情勢も変化した中、世界はサウジに対し、声を荒らげる時かもしれない。(SANKEI EXPRESS

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