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米下院、TPA法案結論持ち越し 翻弄されるTPP 議会は戦術優先

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米下院、TPA法案結論持ち越し 翻弄されるTPP 議会は戦術優先

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米首都ワシントンで民主党下院議員らとの会合を終えたバラク・オバマ大統領(中央)とナンシー・ペロシ院内総務(右)=2015年6月12日(ロイター)  米下院は12日、通商交渉の権限を大統領に委ねる貿易促進権限(TPA)法案を採決し、219対211の賛成多数で可決した。しかし自由貿易で不利益を被る労働者への支援策を定めた貿易調整支援法案は126対302の反対多数で否決。TPA法案と貿易調整支援法案は一体として扱うことになっているため、TPA法案が成立するかどうかの結論は持ち越された。

 TPA法案の成立は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の合意に不可欠とされており、今回の投票結果はTPP交渉の逆風となる。TPA法案を推進してきた共和党のベイナー下院議長は12日の採決直後、否決された貿易調整支援法案の再審議を求めた。オバマ大統領も「下院は可及的すみやかに貿易調整支援法案を可決するよう求める」とする声明を発表。米メディアによると、共和党内からは16日の再投票を目指す声が出ている。

 12日の投票では貿易調整支援法案が歳出拡大につながることを懸念する共和党から全体の3分の2にあたる158人が反対。TPA法案成立を警戒する勢力が広がった民主党からも全体の4分の3にあたる144人が反対した。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS

 ≪翻弄されるTPP 議会は戦術優先≫

 12日の米下院での採決でTPA法成立が持ち越されたのは、上院では一体化されたTPA法案と貿易調整支援法案の採決を再分割して投票にかけた共和党指導部の戦術が裏目に出たかたちだ。貿易調整支援法案否決を決定づけた民主党下院トップのペロシ院内総務は、可決を目指す共和党に対して「条件闘争」を持ちかける態度も示唆。ただし共和党内では民主党への不信感が強く、今後の協議は難航しそうだ。

 崩れたシナリオ

 議会で多数派を占める共和党が分割採決を選んだのは、一体採決では貿易調整支援策による歳出拡大を懸念する共和党議員が大量に造反し、否決される可能性があったからだ。一方、分割採決なら、TPA法案は自由貿易に前向きな共和党の賛成で可決できるうえ、貿易調整支援法案は共和党から大量の造反が出たとしても、労働組合を支持基盤とする民主党から多数の支持を集めて可決できるというシナリオだった。

 しかし12日の審議では、これまで法案への賛否を明言していなかったペロシ氏が貿易調整支援法案への賛成がTPA法案成立のお膳立てをすることに懸念を示し、「反対票を投じる」と表明。これが民主党議員の大半が反対にまわる引き金となって、民主党の支持で貿易調整支援法案を可決するという共和党のもくろみは崩れ去った。

 ペロシ氏は採決後の声明で「TPA法案成立の可能性は、安定的な道路整備法案の可決によって大きく高まる」と指摘しており、両党の間にある道路整備の財源をめぐる対立の解消が共和党にとって突破口になる可能性もある。ただし一部には「ペロシ氏による時間稼ぎ戦術だ」との見方もあり、今後の進展は不透明だ。

 再投票へ調整急ぐ

 今週前半にも行われる見通しの再投票に向け、オバマ大統領と両党は調整を急ぐが、貿易調整支援法案の内容を見直せば、可決されたとしても、すでに同法案をTPA法案と一体で可決している上院との調整が必要になる。

 このため米メディアの報道では下院でも上院と同様に両法案を再び一体化して再投票にかける案も浮上。貿易調整支援策による歳出拡大を懸念する共和党議員は今回の投票で反対を表明したことで“ガス抜き”できたとして、再投票ではTPA法案成立のために賛成票を投じるという見立てだ。

 また、共和党内では再投票が失敗した場合、TPA法案と貿易調整支援法案を一体として扱うという取り決めをキャンセルし、改めてTPA法案を単独で可決する案も出ている。しかし、この場合も上院との調整や再審議が必要となり、混迷の度を深めることになりそうだ。(ワシントン 小雲規生/SANKEI EXPRESS

 ≪甘利担当相「最短日程は厳しく」≫

 TPP交渉の合意に欠かせないTPA法案の成立が持ち越されたことを受け、甘利明(あまり・あきら)TPP担当相は13日、東京都内で記者団に対し、交渉参加12カ国による閣僚会合の月内開催は困難との見方を示した。参加国はTPA法案が成立すれば、6月下旬にも閣僚会合を開催して大筋合意にこぎ着けたい考えだったが、合意が7月以降にずれ込むのは避けられそうにない。

 甘利氏はTPA法案と一体で扱う貿易調整支援法案を米下院が否決した結果について「極めて微妙。TPA法案は可決されたが、そのままでは機能しない不思議な状態」と指摘。16日にも見込まれる再投票に向けて「米下院でさらなる努力が行われる」と望みをつなぐ一方、閣僚会合の開催に関しては「最短日程は厳しくなった」と述べた。(SANKEI EXPRESS

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