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新国立競技場、財源に「命名権」売却浮上 実現性は…

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新国立競技場、財源に「命名権」売却浮上 実現性は…

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解体作業が終わり、整地された国立競技場跡地。新国立競技場は2019年5月の完成を目指す=2015年6月16日、東京都新宿区(寺河内美奈撮影)  ≪総工費2520億円 19年5月完成目指す≫

 2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区)について、下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相は29日、東京都内で開かれた主要組織による調整会議で、総工費が基本設計時より約900億円増え、2520億円となる見込みを正式に明らかにした。また命名権(ネーミングライツ)の売却や国民からの寄付などで200億円を確保したい意向も示した。完成は当初より2カ月遅れて19年5月となる。7月上旬に業者と正式契約を結び、今年10月から着工する。

 ただ、2520億円には、大会後に設置する開閉式屋根の費用は含まれていない。命名権もどの程度の金額で売却できるのか不透明だ。

 都への上積みは求めず

 会議後、下村文科相は命名権を売却したり国民からの寄付を募ったりする意向を表明する一方で、残る増額分については東京都に負担を要請している500億円の上積みは求めず、スポーツ振興くじ(サッカーくじ、toto)の収益金からの充当に期待を示した。

 totoをめぐっては現在、超党派の国会議員でつくるスポーツ議員連盟が、プロ野球への対象拡大や、新国立にあてる収益を5%から10%へ引き上げることなどを検討している。

 デザインは英国在住の女性建築家、ザハ・ハディド氏の案で特徴的な2本の巨大アーチを維持。高騰する建設資材などのコスト削減や工期を19年秋のラグビー・ワールドカップ日本大会に間に合わせるため、開閉式屋根の設置は五輪後に先送りするほか、最大で8万人収容の観客席のうち1万5000席を仮設に変更することが正式に決まった。

 下村文科相は「ギリギリまでコストダウンできないか、私も直接関係者と会って交渉してきたが、予定よりも相当上回った」と語った。一方、会議に出席した舛添要一都知事は「説明を聞いただけですから」と話すにとどまり、都の負担増は宙に浮いたままだ。

 「国民的合意、十分でない」

 また、開閉式屋根の設置費について下村文科相は「(全体の整備費が)13年の試算から2年間でこれだけ上がった。ちょっと今、予想がつかない」と歯切れの悪い答えに終始した。

 事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が13年に示した開閉式屋根の設置費用の試算は約140億円だった。しかし、大会後の設置工事となると巨大な足場の組み直しなどが必要になり、経費の膨張は避けられない。建築家からは「300億から400億円程度かかる」との見方が出ている。

 追加財源として急浮上した命名権売却も実現性には不透明な部分が多い。

 命名権の契約額は、東京都調布市の味の素スタジアムが14年からの5年契約で10億円、横浜市の日産スタジアムは13年からの3年間で4億5000万円となっており、数百億円をまかなうのは簡単ではない。国交省関係者も「国の施設に民間企業や商品名がつくことに対し、国民的なコンセンサスが十分でない」と後ろ向きだ。(SANKEI EXPRESS

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