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「嘘つかれた」 変更8競技から不満 東京五輪会場 IOC追加承認
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江の島の入り口に掲げられた2020年東京五輪のセーリング会場承認を祝う横断幕=2015年6月9日、神奈川県藤沢市(共同) 国際オリンピック委員会(IOC)は8日、スイスのローザンヌで開かれた理事会で、2020年東京五輪の会場計画で未承認だった10競技のうち、セーリングなど8競技の会場を新たに承認した。実施が決まっている28競技のうち、自転車とサッカーを除く26競技の会場が決定、大会組織委員会や東京都は大幅なコスト削減を見込める状況となった。
ただ、会場が広域に分散したことによる弊害も予想され、懸案の新国立競技場(東京都新宿区)建設問題も未解決だ。
「合わせて17億ドル(約2140億円)の節約が可能。IOCのバッハ会長からも大変高い評価をいただいた」。8日のIOC理事会後、組織委の武藤敏郎事務総長は計画変更によるコスト削減の見積もりを披露した。
昨年6月に舛添(ますぞえ)要一都知事が建設費の増大などへの懸念から見直しを表明。組織委と都は新設施設を減らし、既存施設を代替会場とすることで費用圧縮を模索した。追い風だったのが、IOCが昨年12月に承認した五輪改革だ。開催都市の負担軽減策として既存施設の活用が奨励され「渡りに船となった」(組織委関係者)。約1年でほとんどの会場の決着にこぎ着け、組織委の室伏広治スポーツディレクターも「ゴールが見えてきた」と安堵した。
一方で、東京が招致段階でアピールした「選手第一のコンパクトな計画」の理念は置き去りにされた。バスケットボール、バドミントン、セーリングは江東区の施設新設が中止となり、それぞれさいたま市、東京都調布市、神奈川県藤沢市江の島に移った。中央区晴海の選手村から半径8キロ圏内に会場の85%を置く当初の計画から8競技の会場が圏外に去り、招致関係者は「(国際的に)空手形を切る結果となり、残念」と話す。
広域開催は運営面にも課題を残す。選手は移動の負担が増し、警備態勢の拡充も求められる。江の島は首都圏でも指折りの海水浴場で、藤沢市の鈴木恒夫市長は「交通渋滞が課題」と認めた。
競技団体には集客や注目度の低下への懸念も根強い。計画変更で「嘘をつかれたも同然」(日本バドミントン協会幹部)「組織委や都には不信感しかない」(日本バスケットボール協会関係者)との声もある。開催準備で連携が必要な競技団体との間にしこりが残り、日本オリンピック委員会(JOC)のある理事は「出だしからこんな状況で心配」と嘆く。
会場整備で最大の目玉となる新国立競技場の建設は迷走が続き、バッハ会長も理事会後の記者会見で「東京の素晴らしい準備の進展に影を落とすことを望まない」と早期解決を求めた。
文部科学省は建設費の増大や工事が間に合わないことを理由に、開閉式屋根の設置を大会後に先送りすることなどを検討、国と都は費用の負担をめぐって依然対立が続く。
IOCのヒッキー理事は「メーン会場は五輪の顔で、大会の成功にも直結する」と指摘し「政府、東京都、組織委で協議して、問題解決を急ぐ必要がある」と懸念した。
≪バッハ会長 新国立競技場に懸念≫
新国立競技場の建設問題について、下村博文(しもむら・はくぶん)文部科学相は9日の記者会見で、「国際的な信用を失墜させないため、2019年春に完成するよう対処する」と述べ、目標時期を守る考えを重ねて強調した。IOCのバッハ会長は「政府は解決策を見つけるだろう。懸念しているのは決定の中身より、むしろスピードだ」と早期決着を求めた。会場計画見直しには「既存施設を活用した賢明な方法だ」と評価。今回の理事会で変更が承認された7競技の会場の見直しで7億ドル(約880億円)の経費が圧縮され、これまでと合わせて17億ドル(約2140億円)の削減につながったとした。(共同/SANKEI EXPRESS)